フローレンス・ピュー、『ミッドサマー』撮影時に自分で自分を痛めつけていた ─「撮了後、役と離れることに罪悪感もあった」

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品『ブラック・ウィドウ』(2021)などのエレーナ・ベロワ役でお馴染みフローレンス・ピューは、今日もっとも評価される若手女優の一人。ピューはキャリアを大きく切り開いた『ミッドサマー』(2019)撮影時の心理状態に苦しいものがあったことをPodcast番組出演時に語っている。
アリ・アスター監督による狂気の祝祭ホラー『ミッドサマー』で、心理学を専攻する大学生ダニーを演じたピュー。ダニーはボーイフレンドのクリスチャンやその友人たちとともに、スウェーデンのホルガ村で90年に一度開催される夏至祭に訪れ、そこで遭遇する奇怪な出来事に精神を蝕まれていく。
家族を失ったトラウマや、クリスチャンたちに感じる不安や不信に苛まれるダニーが正気を失っていく様は、ピューの表現力を世界中に知らしめることとなったが、ピューは、それまで演じてきたどのキャラクターでも経験したことがないほどに、ダニーにとても没頭していたと振り返っている。
「以前は、大きな苦しみの渦中にいる人物を演じたことがなかったので、自分自身をとてもひどい境遇に置こうとしたんです。恐らく他の演者たちは必要としていなかったけど、私はただ最悪の事態を想像しようとしていました。」
周囲に求められるからではなく、自らの意思で難役に挑むチャレンジを課したものの、そのストイックな姿勢にどんどん拍車がかかっていったそうだ。
「日ごとに、その内容はおかしなものに、そして難しいものになっていきました。頭の中をより悪い、よりどんよりしたものでいっぱいにしていきました。その演技をものにするために、最終的には確実に自分自身を痛めつけていたと思います。」
『ミッドサマー』の撮影終了後、ピューはグレタ・ガーウィグ監督の『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)でマーチ家四姉妹の末っ子エイミーを演じるために、すぐさまボストンへ移動となった。「飛行機から外を眺め、計り知れない罪悪感を抱いたことを覚えています。感情面においてダニーと離れるような気がしたので」と複雑な想いに駆られていたことも吐露している。創作上のキャラクターとはいえ、ダニーがいかにピューにとって重大な意味を持つ存在であったが窺えるエピソードだ。
不安定かつ狂気を露わにしたダニーから一転、エイミー役では芸術的センスに溢れ、勝気で溌剌とした魅力を放ったピュー。MCU作品にてエレーナ役としての更なる活躍が期待されるほか、待機作に『DUNE』の続編『Dune: Part Two(原題)』や『オッペンハイマー』などが控えている。今後もピューの行く先から目が離せなくなりそうだ。
Source:the “Off Menu” podcast