マッツ・ミケルセン、主演新作に「多様性が欠けている」ことを指摘した記者への反論が話題に

「本作はデンマーク製作ということで、キャストはみな北欧人種です。ですので、多様性に欠けているわけですが……」。記者会見でこう指摘されたマッツ・ミケルセンは、呆れた様子で首を振りながら「何を言っているんだい……?」と苦笑した。第80回ヴェネツィア国際映画祭、ミケルセン主演映画『The Promised Land(原題)』の記者会見での一コマだ。米Deadlineが伝えたこの様子は、YouTubeやSNSでも映像が拡散されている。
デンマーク人と名乗った記者が尋ねようとしているのは、米アカデミー賞の作品賞部門応募資格として、出演者やスタッフの多様性に関する基準が設けられることが2024年(第96回)より適応される件への見解だ。これは、キャスティングや製作、インターンやマーケティングの人材に、女性、少数人種や民族、LGBTQ+、障がい者を含んでなければならないというもので、4つのカテゴリのうち2つの基準をクリアすることが新たに課されることになる。
記者は、『The Promised Land』はこの基準を満たしていないことを指摘し、「芸術的な理由ではなく、多様性の理由によって賞に加われないことを不安に思いますか?」と質問。これに対してミケルセンは素早く「あなたは?(Are you?)」と短い逆質問を切り返しながら、「僕は真剣で真面目です。でも、持ち出したのはあなただから、まずあなたが答えて」と続けた。
ミケルセンの予想外の反応にやや狼狽した様子の記者が、韓国人キャストのみでオスカー作品賞を獲得した『パラサイト 半地下の家族』(2019)の名を咄嗟に持ち出すと、ミケルセンは「どう思うの?」と追加で返す。記者は『パラサイト』が素晴らしい映画であったことや、同じようにオール韓国人キャストでありながら作品賞の対象となった一方、『The Promised Land』は(新基準によって)そうならないことが「少し難しいところだと思います」と述べた。
しかし結局のところ、ミケルセンは「質問の意図がわからない」と呟き、隣席のニコライ・アーセル監督の方に視線を移す。一連のやり取りを見ていたアーセル監督は『The Promised Land』の概要について、1750年代のデンマークを舞台に、当時はおそらく現地で唯一だった有色人種の少女が差別を受けていたことなどを描く物語であると説明し、多様性キャスティングについては「考えることがありませんでした。1750年代の当時をそのまま描く歴史モノだから」と返答。監督の回答を聞く間、ミケルセンはコップに注いだミネラルウォーターをゆっくりと口に運んだ。
SNSでの反応は様々だ。ミケルセンの素直な反応や、記者の質問は無意味だと指摘する声もある一方、むしろ記者の質問は的を得ていて議論に値する内容だったものの尋ね方が悪く、本質が伝わらないままミケルセンの回答を得られなかったことを残念がる意見もある。
『The Promised Land』は、歴史上の人物ルドヴィク・カーレン船長を描く実話ドラマ。ルドヴィク・カーレン役で主演するマッツ・ミケルセンのほか、「レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星」(2020‐)のアマンダ・コリン、『罪と女王』(2019)のマグヌス・クレッペル、「コペンハーゲン」(2022)のシモン・ベネビアグ、『ノースマン 導かれし復讐者』(2021)のグスタフ・リンド、『シック・オブ・マイセルフ』(2022)のクリスティン・クヤトゥ・ソープ、『ヴァルハラ 神々の戦い』(2019)のヤコブ・ローマンらが出演する。既に予告編映像が公開されている。
Source:Deadline