『モアナと伝説の海』当初はマウイが主人公だった ─ ドウェイン・ジョンソン、ディズニーから直オファー

2016年に公開されたディズニー作品『モアナと伝説の海』は、南の楽園モトゥヌイの少女モアナが、世界を救うために悩み傷つきながらも大きな使命に挑む冒険物語だ。高波のように大きな壁にぶつかっても、諦めずに自分の心の声に従うモアナの勇姿は、世界中の人々に感動を与えたことだろう。
モアナの傍ら、ひときわ大きな存在感を発揮したのが、筋骨隆々、全身タトゥーだらけの大男マウイだ。主人公であるモアナをも凌駕するほどの強烈な印象を放つマウイは、海と風を自在に操り、神から与えられた「魔法の釣り針」を使ってどんな生き物にも変身することができる。そんなマウイだが、実は企画の初期段階は主人公として検討されていたのだという。公開当時の2016年11月に行われた米CinemaBlendとのインタビューにて、監督を務めたジョン・マスカーとロン・クレメンツが語っている。
企画当初は、「自分たちがあまり多くは知らない世界の一部を描く作品を作りたいという想い」があったのだそう。2人はたくさんの神話を読み、目を引くキャラクターとしてポリネシア神話に登場するイタズラ好きの半神マウイを見つけたのだという。「初期段階の物語は、『マイティ・マウイ(Mighty Maui)』と題を決めて、2〜3の神話を基にしたマウイ中心の物語だったんです」とクレメンツは語っている。
この時点でまだ現地調査を行っていなかった2人は、本作で製作総指揮を務めたジョン・ラセターの指示を受けて、太平洋諸島にある数々の地を訪れたという。クレメンツいわく「航海の歴史や人間と海の繋がり、海を生きたモノのように語る現地の人々、自然に対する畏敬の念、そして過去とのつながりなど、物語に無かったもの」を肌で感じたのだそう。この体験後、考え方が劇的に変化したというマスカーとクレメンツは当時を振り返る。「おそらく(歴史や神話に対して)固定観念みたいなものを持っていて、あまり理解していなかったんです。」
現地調査を終えたマスカーとクレメンツは、海と密接な関係にある航海の歴史を物語の中心に据えて、再び作業にあたった。そしてついに、海に選ばれし少女モアナとかつて英雄と称えられたマウイが、「心」を奪われ溶岩の悪魔テ・カァと化した強大な力を持つ女神テ・フィティに立ち向かう冒険物語を完成させたのだ。
本作でマウイを演じたのは、“ザ・ロック”ことドウェイン・ジョンソン。米ScreenRantによると、製作のディズニーは、マウイを演じる俳優にはドウェインしか考えていなかったのだそう。大々的に開催されたモアナ役のオーディションとは対照的に、マウイ役のオーディションは行われず、ディズニーはドウェインに直々のオファーを送っていたのだ。オファーを受けたドウェインは、マウイのようなキャラクターを演じてみたかったと快諾したという。もっとも、ドウェインはポリネシア人の血を引いており、ポリネシア神話のマウイを演じるにはまさに適任だったと言えるだろう。
ちなみに、ドウェインは公開から約3年後の2019年11月、マウイの大ファンだという3歳の白血病患者ハイラム君のために劇中歌「You’re Welcome(邦題:俺のおかげさ)」を即興で披露した動画を自身のInstagramにて投稿している。
Source:CinemaBlend,ScreenRant,CBR