『ムーラン』米Disney+で大ヒット、収入270億円超え ─ コロナ禍で劇場公開断念、配信リリースの功罪は

ディズニーによる実写映画『ムーラン』が、米国のDisney+にて、収入2億6,000万ドル(約272億円)を超える大ヒットとなっていることがわかった。米Yahoo!が報じている。
当初2020年4月17日に公開予定だった『ムーラン』は、度重なる公開延期を経たのちに劇場公開を断念。2020年9月4日から、Disney+のサービスが展開されている国と地域では「プレミアアクセス」として独占配信されている。価格は日本では2,980円(税抜)、米国などでは29.99ドルだ。
米国の調査会社7PARK DATAによると、9月12日までに、米国のDisney+会員の29%近くが『ムーラン』を視聴。これは同サービスの人気コンテンツを大きく上回る数値だという。ディズニーによれば、全世界の会員数は6,000万人以上で、その半数以上が米国内の会員とのこと(具体的な数字は発表されていない)。これらの情報から、7PARK DATAは、『ムーラン』を視聴した米国の会員は約900万人、国内の収入は2億6,100万ドルにのぼると判断した。
『ムーラン』をめぐっては、中国政府による少数民族の弾圧が問題視される、新疆ウイグル自治区で撮影が行われていたことが配信後に判明。エンドクレジットにて現地当局に謝意を示したことも含め、世界的に激しい批判を浴びた。中国では配信リリースではなく劇場公開となっているが、人権問題・国際問題の影響もあろう、期待ほどの興行収入には結びついていない。ところが世界的に見れば、この問題は興行に大きなダメージをもたらしていないようだ。
発表されたデータは米国に限ったものであり、『ムーラン』は世界各国で配信されているため、ディズニーはさらに巨額の収入を得ているとみられる。しかも、従来の劇場公開ならば、興行収入は映画会社と映画館がそれぞれ分配された金額を受け取るが、『ムーラン』の場合は収入がすべてディズニーに入るのだ。ひとつの実験として行われた『ムーラン』の配信リリースは、コロナ禍の苦境で大きな成果を収めたといっていいだろう。劇場公開に踏み切った『TENET テネット』の米国興行収入が、報じられている『ムーラン』の収入額に及んでいないことも事実なのである。
もっとも、こうした“興行的成功”を、素朴に成功として受け止めるべきかという点には疑問の余地も大いにあろう。そもそも、配信リリースが決定した直後から映画ファン&ディズニーファンの間では批判的な反応が少なくなかったほか、すでに営業を再開していたヨーロッパの映画館も抵抗。フランスの映画館で展示物が破壊されたことも話題を呼んだ。今後、ディズニーは映画館にきちんと回帰するのか、それとも『ムーラン』の成功をもとに同じ戦略を推し進めるのか。そのスタンスが問われるのはここからだ。
映画『ムーラン』はDisney+プレミアアクセスにて独占配信中。2020年12月4日(金)からは追加支払なく視聴することができる。
Source: Yahoo!