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若きクリストファー・ノーランのメジャー進出、『オーシャンズ』スティーヴン・ソダーバーグ監督の尽力があった

クリストファー・ノーラン スティーヴン・ソダーバーグ
Photo by Georges Biard https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Steven_Soderbergh_Deauville_2013.jpg https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Christopher_Nolan_Cannes_2018.jpg | Remixed by THE RIVER

『オーシャンズ』シリーズのスティーヴン・ソダーバーグ監督なくして、クリストファー・ノーランによる『ダークナイト』3部作は存在しなかったかもしれない。ワーナー・ブラザースとノーランが『バットマン ビギンズ』(2005)の前に『インソムニア』(2002)でタッグを組むにあたり、ソダーバーグが両者の仲介役を買って出ていたのだ。ソダーバーグ自身が米Rolling Stoneのインタビューにて明かしている。

アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクという豪華共演のサスペンス・スリラー『インソムニア』。この映画を手がける以前から、ノーランは『メメント』(2000)で気鋭の監督としてすでに注目を集めていた。しかし、ワーナー・ブラザースの重役は『インソムニア』の候補としてノーランを検討することさえ消極的だったという。

そもそも『メメント』は丸1年かけて映画祭での上映を行ったものの、なかなか配給会社が決まらないという経緯があった。ソダーバーグは、ノーランのエージェントであるダン・アローニから連絡を受けて『メメント』を鑑賞し大ファンになったという。

「数か月後、ダンからまた連絡があって、“クリス(クリストファー・ノーラン)が『インソムニア』の脚本に興味を持っているんだけど、ワーナーが打ち合わせしてくれない”と言うんです。どういうことなのかと聞いたら、“重役が『メメント』を気に入っていないみたいで”と。」

そこでソダーバーグは、ノーランに代わってワーナーに「打ち合わせの場を設けてください」と直々に連絡。「『メメント』を気に入っていない」との返事にも、「映画作りは好きでしょう? だったら打ち合わせをしましょう」と交渉したのだという。もっとも、ソダーバーグは「私がしたのはそれだけ。一旦その場に入ってしまえば、クリスは仕事を手に入れる人だとわかっていたから」と謙虚な姿勢を崩さない。

「そこで実りある関係がスタートしましたが、はっきり言っておくと、いずれにせよクリストファー・ノーランは頭角を現したでしょう。『インソムニア』を作らなかったとしても別のものを作っていたでしょうし、それが現在のキャリアにつながったはずです。彼のために電話をしたことは、環境の幸運な巡りあわせに過ぎませんよ。」

もっとも、『バットマン ビギンズ』のためにワーナーからノーランへのオファーが出されたのは、『インソムニア』が商業的・批評的な成功を収めてから1年と経たない時期だった。いずれ人気監督になっていたにせよ、ノーランが『ダークナイト』3部作でキャリアを飛躍させたことは確かで、そのためには『インソムニア』が必要だっただろう。その後、ノーランは『TENET テネット』(2020)までワーナーとのパートナー関係を継続した。

作品の規模やジャンルに縛られることなく、フラットに製作活動に臨んできたソダーバーグ。ちなみに、いまや『アベンジャーズ』シリーズや『グレイマン』(2022)で知られるアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟を発掘し、『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』(2002)で長編映画デビューさせたのもソダーバーグだった。その慧眼に改めて驚かされるばかりだ。

Source: Rolling Stones

Text: Yuka Shingai, 稲垣貴俊

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THE RIVER編集部THE RIVER

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