クリストファー・ノーラン、映画の題名を1単語にしがちな理由 ─ 『フォロウィング』『メメント』から『TENET テネット』までの傾向

映画監督クリストファー・ノーランの作品には、その多くに“言われてみれば”の共通点がある。タイトルがきわめて短く、ほとんどの作品がたった1語だけなのだ。『フォロウィング』(1998)や出世作『メメント』(2000)、『インソムニア』(2002)に『インセプション』(2010)、『インターステラー』(2014)、『ダンケルク』(2017)、最新作『TENET テネット』(原題:Tenet)まで……。例外は『ダークナイト』3部作と『プレステージ』(2006、原題は冠詞が付いてThe Prestige)のみである。
なぜノーランは、自身の作品のタイトルをなるべくシンプルにしようとしているのだろうか。米CinemaBlendでは、本人の口から真意が語られている。
「僕にとって、タイトルはすごく扱いづらいものです。自意識が強くなりすぎてしまうから。(タイトルには)映画の何かを伝える方法を求めますし、それに大作映画なら、ある程度は作品をブランド化することになります。僕はいつでも、通じるかぎり最もシンプルなものに惹かれるんですよ。」
ここでノーランが明かしているのは、長編デビュー作である『フォロウィング』(原題:Following)が、脚本を執筆した時点では『ザ・フォロウィング(The Following)』だったという事実だ。ノーランは「できるだけ短く簡潔にすることに興味をおぼえ始めたのは、あれが最初だったと思います。結局、それがすべてに通じているんですが」と振り返った。『フォロウィング』には、のちのノーラン作品にも通じる劇構造やテーマ、モチーフがたくさん詰め込まれている。タイトルでさえもそうなのだから、ノーランがいかに早熟のアーティストであったかがわかるだろう。
ノーランは回答の最後に、「すべてはワクワクするものを作りたいということ。発表するのが楽しみになるものを作りたいんです」と締めくくった。これまでにも作品を象徴する言葉をタイトルに据えてきたノーランだが、最新作のタイトル『TENET』は「信条」という意味。これまではタイトルと物語が直結するケースが多かったが、〈時間の逆行〉をテーマとする本作の題名がなぜ「信条」なのか…? 映画を観る際には、そちらにも少しだけ気にかけておくといいかもしれない。
映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)全国ロードショー。
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Source: CinemaBlend