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【ネタバレ】『ノマドランド』で『アベンジャーズ』が果たす役割とは ─ クロエ・ジャオ監督が明かす

ノマドランド
(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

『ザ・ライダー』(2017)に続くクロエ・ジャオ監督の最新作『ノマドランド』が公開中だ。2008年に発生したリーマンショックを背景に、経済システムから淘汰されていった高齢のノマド(=遊牧民)たちを描いていく本作では、物語のリアリティを浮き彫りにする上で、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品『アベンジャーズ』が大きな役割を果たしているようだ。その真意を、ジャオ監督が明かしている。

この記事には、『ノマドランド』のネタバレが含まれています。

ノマドランド
(C)2021 20th Century Studios. All rights reserved.

『ノマドランド』の主人公は、長年住んでいた企業城下町から追い出され、住む場所を失ってしまった60代の女性ファーン。“ヴァンガード”と名付けたキャンピングカーに最低限の荷物と思い出を詰め込み、放浪の旅に出ていく。

職を転々とし、借りぐらしを続けていたファーンは、Amazon社のパート仲間からノマドたちが集う共同体の存在を知らされ、同じ境遇を持つノマドたちに囲まれた環境に身を置くことになる。経済システムから隔絶されたファーンたちの生活が描かれる中で、劇中では、この質素倹約な生活とは対照的な描写が登場する。マーベル映画『アベンジャーズ』(2012)が上映されている映画館の前をファーンが歩くというものだ。

この描写は、ファーン個人に対して大きな影響を及ぼすものではないものの、ジャオ監督によれば、この僅かな描写が『ノマドランド』の世界観に深みをもたらす役割を持っているのだという。米Fandangoのインタビューにて、「舞台となる2011年後半から2012年の始め、この時代を代表する何かを加えようとしていました」と語るジャオ監督は、このシーンの意図を以下のように明かしている。

「(この頃に)一番ヒットした映画は何だったかと考えた時に、それは『アベンジャーズ』でした。私自身にとってもMCUに魅了され始めた頃でした。それだけではなく、これはファーンが、私たちが馴染みのある生活からどれだけ離れたところにいるのかを示してもいるんです。

ジャオ監督の言う通り、『アベンジャーズ』は、『007 スカイフォール』や『ダークナイト ライジング』などを抑え、2012年の世界興行収入ランキングでトップの座を獲得。15億ドル超というギガヒットを記録した。2012年はリーマンショック後の景気後退が緩和し始めた時期で、『アベンジャーズ』の大ヒットは破綻した経済の復活を示す象徴とも捉えられる。

映画館に貼り出されていたポスターをじっと眺めていたファーン。エンターテインメントとはほぼ無縁の生活を送っていた彼女は、これを見て何を思っただろう?大衆から切り離された人生を歩むノマドたちにとって、映画とはどういう存在なのか。もう一度作品を鑑賞する機会があれば、この場面を意識してみるとノマドたちへの想像を更に膨らませられるかもしれない。ちなみに、ジャオ監督の次回作は、奇しくも『アベンジャーズ』と同じMCU作品である『エターナルズ』である。

映画『ノマドランド』は、2021年3月26日(金)より全国公開中。

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Source: Fandango

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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