『トップガン』戦闘機の爆音はこうして作られた、音響スタッフが語る制作の舞台裏

あの名作映画の“音”はいかにして作られたのか。ハリウッドの映画音響にフォーカスした世界初のドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』より、トム・クルーズ主演『トップガン』(1986)音響制作の舞台裏に迫った本編映像が到着した。
映画制作の現場において、音響は長いあいだ重要視されず、制作期間や資金面も決して恵まれてこなかった。本作では、名作映画の裏側で人知れず努力を続けてきた音響技術者たちの活躍と、“音”の秘密を知ることができる。
続編『トップガン:マーヴェリック』も控えるトム・クルーズの代表作、『トップガン』の音響を担当したのは、女性スタッフがまだ少なかった1980年代から、『フラッシュダンス』(1983)や『ビバリーヒルズ・コップ』(1984)などで活躍していたセス・ホール。リアルな音を求めてジェット機の音を録音するが、本物の音は想像よりも退屈で迫力に欠けるものだった……。
理想の音を観客に届けるため、セスは試行錯誤の日々を送っており、その調整や工夫には長い時間が必要となる。しかし、その重要性はスタジオには理解されず、作業に励むセスには、スタジオの重役から「音は重要じゃない」と突然の解雇が言い渡された。非情な言葉をぶつけられるも、臨場感あふれる“音”を追い求めた努力は実を結び、無事に報われることとなる。解雇を言い渡された数か月後、アカデミー賞の音響効果部門にノミネートされたのだ。
どのような工夫が、アカデミー賞ノミネートという結果に結びついたのか。録音したエンジン音だけでは迫力のある音にならないと判断したセスは、大胆にも、ライオンやトラの猛々しい咆哮、猿の鳴き声を重ねることで、鋭く激しい、迫力たっぷりの爆音を作り上げたのである。名作の裏側には、セスのように逆境を跳ねのけ、人知れず努力を続けた技術者たちの姿がある。映画制作はチームワークによって成り立ち、音響が大きな側面を担っていることを本作で実感できることだろう。

「映画音響」とは、登場人物の声はもちろんのこと、環境音や効果音、音楽など、映画における“音”のすべてを指すもの。本作では映画監督たちや『スター・ウォーズ』(1977)ベン・バート、『ジュラシック・パーク』(1993)ゲイリー・ライドストロームら映画音響界のレジェンド&スペシャリストへのインタビューとともに“音”の効果と重要性に迫っていく。『キング・コング』(1933)『市民ケーン』(1941)『鳥』(1963)『ゴッドファーザー』(1972)から『ワンダーウーマン』(1917)『ROMA/ローマ』(2018)まで、あらゆる映画の映像もふんだんに登場する。
映画『ようこそ映画音響の世界へ』は2020年8月28日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、立川シネマシティほか全国順次公開。