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ノーラン「歴史が変わった瞬間に観客を立ち会わせたい」 ─ 原爆開発描く『オッペンハイマー』の挑戦

クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
© LFI/Avalon.red 写真:ゼータ イメージ

クリストファー・ノーランは映画の限界に挑む。『インターステラー』(2014)で宇宙空間を、『ダンケルク』(2017)で戦場の陸・海・空を、『TENET テネット』(2020)で時間の順行・逆行を観客に体感させた鬼才が最新作『オッペンハイマー(原題)』で挑むのは、歴史が変わった瞬間に観客を立ち会わせることだ。

「J・ロバート・オッペンハイマーの物語ほど、危険に満ち、紆余曲折があり、倫理的なジレンマに満ちているドラマティックなストーリーを、私は他に知りません」。2023年4月26日(米国時間)、ラスベガスで開催されたCinemaConにて、ノーランはこう語った。

本作は、第二次世界大戦下で原子爆弾の開発・製造計画「マンハッタン計画」を主導した物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描く物語。原爆開発から、のちに本人が核兵器の国際管理の必要性を訴え、水素爆弾への抗議活動を行なうまでの変化が綴られるという。ノンフィクション作品『オッペンハイマー「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇(上・下巻)』(PHP研究所)を原作に、ノーランが自ら脚本を執筆した。

「第二次世界大戦中、アメリカ最高の知性たちが、核の力をめぐってナチスとの決死の争いに身を投じました。その知性は、いつ自分たちが世界全体を燃やしてしまう可能性に気づいたんだろうか、と想像したのです。それでも彼らは突き進み、ボタンを押した。その物語を学ぶ中で、その瞬間に立ち会いたい、それがどのようなものだったかを知りたいと考えました。歴史上最も重大な出来事の、まぎれもなく中心にいた人物の知性と体験に観客を連れていきたいのです。」

以前ノーランは、本作のストーリーがオッペンハイマーの視点で進んでいくこと、その主観性こそがすべてなのだと力説していた。今回のノーランは、歴史上の転換点にいた人物の視点を、映画を通じて観客に体験させようとしている。「そのために、最も素晴らしいキャストと最高の技術者たちを集めました」

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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