ノーラン「歴史が変わった瞬間に観客を立ち会わせたい」 ─ 原爆開発描く『オッペンハイマー』の挑戦

ノーランは「好き嫌いにかかわらず、J・ロバート・オッペンハイマーは歴史上最も重要な人物」だと言い切る。「良くも悪くも、私たちが生きているのは彼が作った世界。彼の物語は想像を絶するもので、映画的な物語とも言えるし、非凡な個人の体験とも言えます。この物語が喚起するのは、最も不安を呼ぶ問いです。それは夢でもあり、絶望でもある。安易な答えはありませんが、だからこそ魅力的なパラドックスなのです」。
会場で上映されたのは、ロバート・ダウニー・Jr.演じるアメリカ原子力委員会の委員長ルイス・ストロースが、ロシアが爆弾を保有していることに触れ、「我々は彼らの数年先をゆかなければならない」と語るシーンや、のちに開発実験が行われる町・ロスアラモスで、マット・デイモン演じるマンハッタン計画の指揮者レズリー・グローヴスが、キリアン・マーフィー演じるオッペンハイマーのチームに爆弾開発を求める場面など。オッペンハイマーが「我々がこの武器を持つべきかどうかはわからない。しかし、ナチスが持つべきでないことはわかる」と自問自答する場面も含まれていたという。
おそらく本作は、ノーランにとってもキャリア史上最大の挑戦。「ぜひとも映画館を訪れ、なるべく大きなスクリーンで観ていただけることを願っています」と力を込めた。
ロバート・オッペンハイマー役は、『インセプション』(2010)『ダンケルク』(2017)などノーラン作品の常連俳優キリアン・マーフィー。妻のキャサリン・“キティ”・オッペンハイマー役をエミリー・ブラント、マンハッタン計画を指揮したレズリー・グローヴス役をマット・デイモン、アメリカ原子力委員会の委員長ルイス・ストロース役をロバート・ダウニー・Jr.、共産党員で精神科医のジーン・タトロック役をフローレンス・ピュー、“水爆の父”として知られる物理学者エドワード・テラー役をベニー・サフディが演じるほか、ラミ・マレックやジョシュ・ハートネット、ゲイリー・オールドマン、ケネス・ブラナー、デイン・デハーン、マシュー・モディーンらが名を連ねている。
映画『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』は2023年7月21日に米国公開予定。
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Source: Deadline, The Hollywood Reporter