【ネタバレ】『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』リック・ダルトン、その後どうなったのか ─ タランティーノが語る

この記事には、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のネタバレが含まれています。
リック・ダルトンの“その後”
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』劇中において、テレビの世界で若手俳優に主演の座を奪われ、すっかり悪役ポジションとなった“落ち目”のリック・ダルトンは、映画に活躍の場を移そうとするもうまくいかず、結果として、最初は良く思っていなかったイタリア映画界に進出。そこで人気(と財産と家族)を手にして、再びハリウッドに構えた豪邸に戻ってくる。ところが、スタントマン兼付き人のクリフ・ブース(ブラッド・ピット)との関係を終える、その最後の夜、リックの豪邸には暴漢たちが闖入してくるのだった。彼ら、マンソン・ファミリーのメンバーたちは、そもそも若手女優シャロン・テートの暮らす隣の家を襲撃するよう指示されていたが、直前にリックと出会ったことで計画を変更したのだ。もっとも、襲撃先に選ぶには相手が悪かったのだが。
クリフと愛犬による激闘が功を奏し、そしてリックの火炎放射器が文字通り火を噴いて、2人はマンソン・ファミリーの暴漢たちを(この世から)撃退する。そしてラストシーン、リックはシャロンに招かれ、初めて隣家を訪れるのだった。リックはその後、どうなったのか。彼は俳優として、どんなキャリアを歩んだのか。
ポッドキャスト「The Margaret Cho」に登場したタランティーノは、「リックのキャリアがどうなりうるのかということは、彼が(実在する人物の)誰を象徴していると考えるのかによって、いろいろありますね」と語った。「ジョージ・マハリスのような道筋もあるし、タイ・ハーディンのような例もある。(リックは)何人かが混ざっているんです」。したがってタランティーノは、本作を一種の“おとぎ話”として描きつつも、リックのその後については現実的な目線で捉えているようだ。
「70年代、たとえ僕が考える以上にリックが成功したとしても、(彼に)起こったであろうことは、僕が見ることができた実際の出来事と同じだと思うんですよ。つまり70年代の後半や80年代の前半には、リックのような俳優にあることが起きていた。50~60年代にテレビで主役を演じてきた男らしい俳優たちが再びテレビに出てきたんですが、今度は年を重ねた、若い刑事の上司役。彼らを任務に送り出す役なんです。」
ここでタランティーノが例として挙げているのが、「刑事スタスキー&ハッチ」(1975-1979)でバーニー・ハミルトンが演じた“オヤジさん”ことハロルド・ドビー刑事。リックはハロルド刑事役のようなポジションで、再びテレビの世界に戻ったのだろうという。ほかには「女刑事ペパー」(1974-1978)で上司役を演じたアール・ホリマンや、ジャック・ケリー、ヴィック・モローといった実在の俳優を口にしながら、「1978年のリック・ダルトンは間違いなくそういう存在だと思います」と語った。
ちなみにタランティーノは、「映画の結末以降、リックは少しだけ意識が変わったり、物事にオープンになったりしたのかもしれません」とも話した。それが自分の命を狙われる経験をしたせいなのかは分からないが、タランティーノは“ある想像”を広げてもいる。それは、そもそもリックが役を選り好みしたことで大役を逃してきたのではないかというものだ。たとえば『Devil’s Angels(原題)』(1967)でプロデューサーのロジャー・コーマンから出演オファーを受けたのをリックが断っていて、代わりに出演を引き受けたジョン・カサヴェテスが、それゆえ『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)に起用されていたとしたら。「リックは悔しがっただろうと思うんですよね」とはタランティーノの弁だ。
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド/エクステンデッド・カット』は2019年11月15日(金)より2週間限定公開中。
Sources: The Margaret Cho, IndieWire, THR