【ネタバレ】『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ブルース・リーのシーン、ブラッド・ピットが気にしていたこと ─ リーの娘はどう観たか

この記事には、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のネタバレが含まれています。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』劇中では、撮影スタジオにて互いに因縁をつける形でブルース・リーとクリフ・ブースが手合わせをすることになる。リーは「ホァァ…」と唸り、飛び蹴りを一撃。クリフはそのまま受け止めて倒れ込み、「悪くないぞカトー、もう一度来い」と挑発。再びリーが飛び蹴りを繰り出すと、攻撃を受け流したクリフが停めてあった車にリーを叩きつける。
動揺した様子のリーとクリフは近接戦にもつれ込むが、クリフの方が一枚上手のように見える。そこにカート・ラッセルが演じるスタント・コーディネーターの妻ジャネット(ゾーイ・ベル)が止めに入るが、リーは「彼は俺に触れるだけで精一杯だった」と自分が不利だったことを認めない。クリフがリーを叩きつけてベコベコにした車を指差すと、それがジャネットの愛車だったと発覚して……。
ブルース・リーが負ける?
本作スタント・コーディネーターのロバート・アロンゾは、偉大な武術家であるブルース・リーを事実上打ち負かしてしまうという展開に、「ブラッドが心配していた」と振り返る。
「ブルースの敗北については、みんな気にしていました。特に僕のような、ブルース・リーをひとつのアイコンとして、マーシャル・アーツの世界だけでなく、哲学や人生観においても尊敬しているような人にとっては、自分のアイコンが負けるところを見るなんてガッカリしてしまいます。」
アロンゾによれば、ブルース・リーvsクリフのシーンは当初さらに長いもので、ブルース・リーの敗北ももっと決定的に描かれていたという。その内容は「怒りや不満の感情を引き出してしまうようなもの」だった。アロンゾはリーに想いを寄せる。
「私自身アジア系アメリカ人として、ブルースは映画におけるアジア人の在るべき姿のシンボルだと思っています。昔よく描かれていた、『ティファニーで朝食を』(1958)に出てくるみたいなやつじゃなくて……。だから、ブルース・リーが負けるというアクションを作るのは難しかったです。現場のみんな”どうします?”って。ブラッドだって、”ブルース・リーですよ?”って特に反対していました。」

当初考えられていた「第3ラウンド」では、2人が打ち合いを続けた後、クリフが「卑劣な技」を繰り出してリーを倒す。この展開を危惧したアロンゾはタランティーノ監督に、リーを弱者にしてしまうのでなく、クリフがリーと対等に渡り合えるほどの実力の持ち主であると示すことさえできれば良いのでは、と提案。タランティーノも納得し、戦いの途中で止めを入れて明確な勝者を決めない結末に変更したのだという。
『ワンハリ』ブルース・リーにあった論争
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で少々意外な展開を迎えたブルース・リーについてはひと悶着があり、リーの娘であるシャノンが「劇場で父が笑い者にされているのは耐え難かった」「父は傲慢なサンドバッグにされた」「ブラッド・ピットのキャラクターが、ブルース・リーをも倒せるほど凄い奴として描きたかったのはわかるが、あの当時のハリウッドの白人みたいなやり方で父を描くのは頂けない」と遺憾の意を表していた。これに対しタランティーノは、「ブルース・リーは傲慢な男だった」「盛っていない」と反論。リーの妻リンダが執筆した伝記からも、その事実は読み取れるとした。
また、ブルース・リーが負けるという展開についても、タランティーノはあくまでもクリフが架空のキャラクターであるとを主張している。「それって、ブルース・リーとドラキュラはどっちが勝つ?っていうのと同じことですよ。フィクションのキャラクターなんだから。」
タランティーノは、クリフが第2次世界大戦で大勢を殺した帰還兵であることを強調して、「もしもクリフがブルースと格闘トーナメントで戦ったら、ブルースに殺されていたかもしれない。でも、もしフィリピンのジャングルで肉弾戦になったら、クリフがブルースを殺すかもしれない」と弁明した。
この反論を受け、リーの娘シャノンは米Varietyを通じ「“ブルース・リーはこうだったけど、これはフィクションだから気にしないで”というのはちょっと不誠実でしょう」とアンサーを返している。
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映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は大ヒット公開中。
Source:HuffPost,IndieWire(1,2),Variety