「最近は無駄に長い映画が多すぎる」「『ゴッドファーザー PART II』や『七人の侍』のようなタイトな3時間半であるべき」 ─ 『ダウンサイズ』監督が持論

「最近は、無駄に長い映画が多すぎます」。
こう語るのは、『アバウト・シュミット』(2002)『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013)『ダウンサイズ』(2017)などで知られるアレクサンダー・ペイン監督。近年、3時間を越える映画が目立つことについて言及し、持論を展開している。
ペイン監督は、米バージニア州で開催された映画祭Middleburg Film Festivalに最新作『The Holdover』を引っ提げて参加。トークセッションでは、映画作りの極意について語る中で、「映画は、なるべく短くあってほしいものです。最近、無駄に長い映画が多すぎます」と述べたのだ。
しかし、ペイン監督は映画が長すぎること自体を批判しているわけではないようだ。トークセッションをレポートした米Indiewireによると、会場ではこのように語ったという。
「もし映画が3時間半あるのであれば、少なくともそれが最も短いバージョンであるべきです。『ゴッドファーザー PART II』や『七人の侍』のようにものすごくタイトな3時間半であるべきなんです。あのような映画はあっという間に過ぎてしまいます。尺そのもので決まるということではないです。」
ペイン監督は具体的な作品名については言及していなかったというが、登壇した日は、マーティン・スコセッシ監督最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』封切りの初週末。ペイン監督は「3時間半」と繰り返していたが、上映時間が3時間26分の同作を意識した発言のようにも感じられる。
これまでにペイン監督が手がけてきた作品を見てみると、一番長い映画で『ダウンサイズ』の2時間15分。その他の作品は2時間前後の尺で製作されている。「映画とは、節減への絶え間ない捜索のようなもの」とペイン監督。「映画の基本的なリズムが何であろうとも、脚本は出来るだけ短く、演技は出来るだけ活発であるべきです。編集でも短くすることを心がけるべきですが、短すぎてもいけません」と持論を語った。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』を手掛けたマーティン・スコセッシ監督が米The New Yorkerに語ったところによれば、脚本は当初200ページ以上あったというが、読み合わせを行う中で、物語が冗長に感じたという。「最初の2時間は上手く進んでいましたが、次の2時間では、ちょっと長すぎるんじゃないかと感じて。物語でエネルギーが尽きてきていたんです」。
結果的に映画は、ペイン監督の言葉を借りれば「最も短いバージョン」として3時間26分に収められた。以前スコセッシ監督は、3時間を超える映画が長すぎると感じる人々に対して「テレビの前で5時間座って観ることができる人もいるわけです。3時間半、劇場で座って観られる人もたくさんいます」とした上で、「シネマに少しばかりの敬意を払っていただきたいです」と語っていた。
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Source:Indiewire,The New Yorker