アメリカのテレビドラマ黄金期、2023年に終了か ─ 2022年は過去最高の作品数も、減少の可能性

現在、アメリカのテレビドラマ業界は黄金期を迎えている。2015年に米国で放送された、“脚本のあるシリーズ(scripted series)”の数は累計420本。その数は新型コロナウイルスが感染拡大した2020年を除いて年々増加してきたが、2023年をもって、このテレビ黄金期は終わりを迎えるかもしれない。
この推測を立てたのは、現在のテレビ黄金期を指す「ピークTV」という言葉を2015年に生み出した、米FXネットワークス会長のジョン・ランドグラフ氏だ。2009年以降、FXは毎年すべてのプラットフォームで放送/配信された“脚本のあるシリーズ”の本数を集計してきたのである。
昨年(2022年)に発表されたシリーズの数は、過去最高の599本。2021年より40本多く(前年比7%増)、2009年の210本と比べるとほぼ3倍だ。この数字には、コロナ禍で制作が遅れた多くの作品がようやく公開されたことも影響を与えたと考えられる。しかし、シリーズ数が過去最高となった2022年は「ピークTVのピーク」となる可能性があるという。
ランドグラフ氏は、テレビ批評家協会のプレスツアーにて「予測するのは難しい」と前置きした上で、テレビシリーズの数は「2023年に減少することが強く示唆されています」と語った。「過去に2度、私が予測を間違えたことは謙虚に指摘しつつも、やはりこれが私の意見です」と述べた。
ピークTVが終わりつつあることを示す指標のひとつとして、ランドグラフ氏は、2022年下半期に新シリーズの数が落ち込んだことを指摘する。2021年に252本を記録した新シリーズの数は、2022年には248本へと2%減少。増加していた上半期からの変化が顕著になっていた。全体で見ても、350以上のシリーズがリリースされた上半期の猛烈なペースから、下半期は減速していたのだ。
2022年8月にも、ランドグラフ氏は、今後新たなストリーミングサービスを通じてシリーズ数が拡大することはないとの見方を示していた。
「ここ数年、新しいストリーミングサービスの参入が目立ちましたが、その時期は終わったと考えています。すなわち過去10年以上続いてきたような、新たな主要番組事業者の参入はないでしょう。実際に、先行していたテレビ番組の事業者が、ある意味では表舞台から退場しています。つまり新しい事業者が増えるのではなく、ある程度事業者が減っている段階なのです。」
自身が「過去に予測を間違えた」と述べているように、ランドグラフ氏は2016年1月にも「今年か来年がテレビのピークになるでしょう」と語っていた。しかしながら、2022年後半に見られたペースの減速や、配信/放送事業者の頭打ち、そしてテレビ業界全体の予算削減や軌道修正を考えると、今度こそ本当に「ピークTV」は終焉に向かいつつあるのかもしれない。
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Source: Variety, The Hollywood Reporter, Deadline