『名探偵ピカチュウ』はなぜポケモン実写化に成功したのか ─ 監督、ソニック再デザインは「厳しい状況になった」と危惧

『名探偵ピカチュウ』監督、ソニック実写化を語る
ハリウッド、日本問わず、これまで様々なアニメ、コミック、ゲームが実写化を果たしてきた。必ずと言っていいほど賛否の分かれるこの試みにおいて、どうやら成功のための重要な分かれ目のひとつには「原作とファンに忠実であるかどうか」があるらしいことが、客観的事実として(ようやく)認められ始めている。実写世界に馴染ませるために現実的なアレンジを加える試みは、次第とリスクテイキングであるとみなされるようになっているのだ。
こうした話題の最新事例となるのが、世界的人気ゲームキャラクターのソニック・ザ・ヘッジホッグを実写化する『ソニック・ザ・ムービー』だ。大きな目とスラリとした体系でお馴染みのこのキャラクターを、同作は陸上選手のような人間的なフォルムとして再解釈し、顔つきもゲームの印象からは大きくアレンジを加えた。
やはりこの背景には、ゲームキャラクターを現実世界に馴染ませるための再解釈があった。エグゼクティブ・プロデューサーのティム・ミラーは米IGNに、「もしもソニックがカワウソみたいな見た目だったら、全裸で走り回っているみたいで変。」「ソニックを現実世界に馴染ませて、リアルな生き物に見せるために必要なことだった」と語っている。
しかしながら、版元の株式会社ポケモンとの密な連携が語られる『名探偵ピカチュウ』と少し異なっているように思われるのが、「SEGAはソニックの目の決断については、完全にはハッピーじゃないと思う」と述べられている点だ。「でも、”こうしないと変になります”と説明しました。もちろん皆で協議しましたし、必要な事柄だけを変更して、ほかはオリジナルに忠実にしようというのが目標でした」と語っているものの、彼らの決断がいかに困難であったは、その後のファンの反応、および監督が自らデザイン修正を宣言する事態を見れば明らかである。
「厳しい状況になった」
「ソニックの話、ちょうど15分前に聞きましたよ。」ファンの批判を受け、『ソニック・ザ・ムービー』がデザインの修正作業に入るらしいという話題が上がったまさにその頃、『名探偵ピカチュウ』ロブ・レターマン監督は米The Vergeの取材を受けていた。米公開予定は2019年11月、わずか半年しか残されてない中でのメインキャラクターのデザインの修正について、ロブ監督は「容易ではないだろう」と危惧する。
「映画を作るのに、正解も不正解もないんですよ。どんなものでも、再デザインってすごく難しんです。我々は撮影に入る前に、ポケモンのデザイン作業に丸一年を費やしました。だから上手くいったんです。もしもピカチュウのデザインが少しでもズレていたら、(ティム役の)ジャスティス・スミスの演技は全くハマらなかったと思います。我々には不可能に思えますが、だからといって彼らには出来ないというわけではないでしょう。」
『ソニック・ザ・ムービー』製作陣に励ましのメッセージを発するロブ・レターマン監督だが、「自分だったらやりたくないです。厳しい状況になっちゃいましたね」とも告白。『名探偵ピカチュウ』からは、アート部門のR.J.パーマー氏が「大変なことになりましたね。僕は『名探偵ピカチュウ』コンセプトアーティストなんですけど、生涯のソニックファンです。お話できませんか?」とも手を差し伸べている。
CGキャラクターだからといって、デザイン修正は簡単に済むものではない。むしろ現場では、想像を絶する過酷な状況に陥っている可能性が高いのだ。製作現場は今、ニャースの手も借りたいころかもしれない。
『名探偵ピカチュウ』は、大ヒット公開中。
『名探偵ピカチュウ』公式サイト:https://meitantei-pikachu.jp/