『ボヘミアン・ラプソディ』でクイーンにハマったら、サントラの次はコレ ─ 音源も大ヒットの舞台裏、ユニバーサル ミュージックに訊く

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットで、クイーン(Queen)が再ブームだ。フレディ・マーキュリーの壮絶な半生を描いた同作に魅了され、クイーンの過去のアルバムや映像作品への需要が高まっている。中には、映画をきっかけにクイーンを初めて知った10代、20代の新たなファンも多いと聞く。
このブームで、クイーンの作品はどれほど売れているのだろうか?THE RIVERでは、発売元のユニバーサル ミュージックの日本法人に独自取材を敢行。映画と共に大ヒットとなった『ボヘミアン・ラプソディ』オリジナル・サウンドトラックやクイーン作品の舞台裏を聞いた。
お話を伺ったのは、同社マーケティングの寺嶋真悟さん。クイーンを始めとする往年のアーティストによる作品のデジタル施策や、国内のアーティスト、クラシック、ジャズまで幅広く担当されている。寺嶋さんからは、「クイーン入門」となる新たなファン、「再入門」となるファンに向け、サントラの次に入手して欲しいタイトルや楽しみ方まで教わった。

想像以上!クイーン作品大ヒットの舞台裏
── 映画『ボヘミアン・ラプソディ』サントラだけでなく、クイーンの過去作品も合わせて大人気ですね。ここまでのヒットは、どこまで予測されていたのでしょうか。
正直なところ、社内でもここまでのヒットは予測できませんでしたね。最初社内では、『ボヘミアン・ラプソディ』のサントラの売り上げ予測はそれほど高いものではありませんでした。僕は「いやいやいや、10万枚いくっしょ!」って思ってたんですよ(笑)。それでも、数字としての予想は高くありませんでした。2018年は、音楽映画として『グレイテスト・ショーマン』が大ヒットしていて、昨年(2018年)8月の段階で映画のサントラ(ワーナー・ミュージック)CDは日本で20万枚くらい売れていました。『グレイテスト・ショーマン』まではいかなくても、半分くらいはいくんじゃないかな?みたいな。当初の見積もりは決して高くなかったんです。
![クイーン(Queen)[ジャケット写真]クイーン『ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)』](https://stg-theriver-stg.kinsta.cloud/wp-content/uploads/2019/02/be5aa371fef0389c48727182d30d1845.jpg)
売れ始めてからは、在庫の確保が大変でした。品切れ店も出てしまって、非常に申し訳なかったです。急いで増産をかけても、作った分があっという間に売れていく状態でした。特に2018年11月9日の映画公開からは加速度的に(売上が)上がっていきました。
── クイーン関連タイトルは、このブームでどれくらい売れているのでしょう?
現在では、ストリーミング再生もアルバムの売上として換算されるようになっています。オリコンさんでは、ストリーミング1,440回再生でアルバム1枚の売上ポイントとみなされます。もちろん、国やチャートの種類によってこの算出方法は異なります。日本よりもストリーミングが普及しているアメリカでは、ストリーミング再生で人気の高いアーティストは、CDを出さず、ダウンロード販売もせず、ストリーミングの配信しかしていない場合でも、全米アルバムチャートに入るようになっているんです。
2018年10月以降(※1)の弊社から発売しているクイーン作品の売上は、CDとDVDの出荷枚数、ダウンロード、ストリーミング全て含めて100万枚を超えています。他社さんの売り上げはわかりませんが、2018年中で一番売れた洋楽アーティストのような気がします。一番ヒットしているタイトルは『ボヘミアン・ラプソディ』のサントラで、1月29日の段階でCDの出荷枚数、デジタル含めて43万枚を超えています。
※1 映画『ボヘミアン・ラプソディ』オリジナル・サウンドトラックの発売日は2018年10月19日だった。
映像作品も物凄く売れています。たとえば『伝説の証 ~ロック・モントリオール1981&ライヴ・エイド1985 』という、モントリオールとライヴ・エイドのフル映像が一緒になったDVDとブルーレイの商品があるんですが、ユニバーサル ミュージックから発売したのが2016年だったんですけど、初回枚数はDVDとブルーレイ合わせて500枚くらいだったんです。映画公開後にもの凄いオーダーを頂きまして、映画公開前の3ヶ月と公開後の3ヶ月の出荷枚数を調べてみたら、なんと1,296倍でした。

── 本当に空前の大ヒットですね。これは凄いことになりそうだと気付いたのはいつ頃ですか?
2018年11月9日に映画が封切られた後、その週明け月曜日に週末動員ランキング1位になったと聞いた時ですね。その週の木曜日にTV番組で長めの特集が組まれたんですけど、そこから色々なTV番組に特集を組んで頂けるようになって、そこからはもう雪崩式に広がっていきました。
あとは、取材やお問い合わせに対応しているだけで1日が終わるくらいでした。2019年1月13日時点まで、再放送を含めて98番組に取り上げて頂いています。ひとつのプロジェクトでここまで多くの番組に取り上げて頂けたことは、個人の経験ですが前例がありません。同僚や上司は、忘年会なんかで業界関係者と会うと、まず「クイーン、凄いね!」と声をかけられたみたいです。
── 映画サントラの次に売れているのは、どのタイトルですか?
2004年のクイーン再ブーム時にリリースした日本独自企画盤の『ジュエルズ』です。理由は、このアルバムが最も日本の皆さんに浸透しているからかもしれません。それから、映画サントラには入っていない「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」が収録されているのもポイントかもしれないです。この曲は、映画ではちょっと登場するだけですけど、日本人にとってクイーンの楽曲といえば「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」が有名ですよね。もちろん、もともとはフレディのソロ曲で、改めてクイーンとしてレコーディングされた曲ですが、ドラマやCMで使用されてとても人気の曲ですね。

ちなみに、『ジュエルズ』の次に日本で売れているアルバムが『グレイテスト・ヒッツ』(1981)なんですが、これはイギリス史上一番売れているアルバムです。

オリジナル・アルバムで一番売れているのは「オペラ座の夜」(1975)です。映画にもアルバムを制作するシーンが登場しますし、「ボヘミアン・ラプソディ」も収録されているからだと思います。

── ところで、寺嶋さんは映画『ボヘミアン・ラプソディ』、どうご覧になりました?
最高だったと思います。試写会では号泣しました。僕は音楽映画のサントラでは『ピッチ・パーフェクト』シリーズや、伝記映画としては、『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』(2014)などを担当していましたが、『ボヘミアン・ラプソディ』はネクストレベルでしたね…。
主演のラミ・マレックとフレディって、よく見比べると決して似ているわけではないと思うんです。それでも劇中でだんだんフレディにしか見えなくなっていって、終盤ではもう「あぁ、フレディだ」と。素晴らしいスタッフにも恵まれたからこそ生まれた、奇跡のような映画だと思います。
日本だから実現 クイーン独占取材の舞台裏
── 日本での再ブレイク、この反響はクイーンのメンバーにも届いているんでしょうか?
間違いなく届いています。ブライアンも映画のヒットを喜んで配給のFOXさんが贈られた法被を着ていましたね。
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今回の映画には、ブライアンとロジャー・テイラーも音楽監督として携わっているんですけど、もともと映画に関するインタビュー取材は受けないと明言していたんです。ひとつ受けてしまうと(次々と依頼が来て)大変になっちゃうということだと思います。映画の公開を記念して、ロンドンのカーナビー・ストリートのクリスマス・イルミネーション点灯式に出席していたんですけど、ここでもインタビュー取材はしていなくて。ブライアンは立体視野の専門家でもあるんですが、自身が手がけた書籍の宣伝としてイギリスのITVに出たことがあったんですけど、基本的に彼からは映画については触れずでした。「Queen 3D」という立体視野の本も出していたので、その紹介はしていたんですが、映画についてはほとんど触れなかったですね。
ですけど、ファンの皆さんはご存知の通り、クイーンは日本のことをすごく大切に思ってくれているんです。日本とクイーンの関係は深く、1975年の初来日当時から日本の関係者がクイーンを推して、推して、推して。
日本のファンの方も熱狂的にクイーンを迎えてくださって。当時、ブライアンも「日本は僕たちをビートルズみたいに迎えてくれた、こんな歓迎は初めてだ」と言っています。2011年の東日本大震災の時もクイーンはチャリティ・アルバム「Songs For Japan」(※2)に「手をとりあって」を収録してくれて、ブライアンとロジャーの2人は直筆のコメントも寄せてくれました。厳密に言えば、クイーンは日本からヒットしたというわけではないんですけど、一番最初に彼らを受け入れたのは日本だと思います。
※2「Songs For Japan」:東日本大震災の復興支援を目的としたチャリティー・コンピレーション・アルバム。ジョン・レノン「イマジン」やボブ・ディラン「嵐からの隠れ場所」など38曲を収録した2枚組。全米ビルボード・チャート最高5位。売上はすべて東日本大震災の義捐金に充てられた。クイーン「手をとりあって」はディスク2の13曲目に収録。
こうした長年の気持ちが通じたのか、映画公開後にNHKによる異例の単独インタビューが実現したんです(※3)。当時、どの国からも単独インタビューは取れていませんでした。アメリカや本国イギリスでも実現していなかったのに、日本から粘り強くオファーを続けていたら受けてくれたんです。
最終的にオファーが通った時、取材日がもう2日後くらいでした。NHKのロンドン支局の皆さんが非常に迅速に動いて頂いて、無事に実現しました。反響はものすごかったです。インタビューは英語版の文字起こしも掲載されて、世界中のファンから凄い多くのアクセスがあったとお聞きしています。
※3 NHKクイーン独占インタビュー:2018年12月、NHKがイギリスでブライアン・メイとロジャー・テイラーへの単独インタビューを実施。12月17日の『ニュースウォッチ9』などで放送された。『ボヘミアン・ラプソディ』公開後、メディアの単独インタビューは初めてで、世界的にもたいへん貴重な機会となった。
その後、ゴールデングローブ賞の受賞式に登場したブライアンが、そこで映画について少し話しているんですけど、2018年末のタイミングでは本当に独占、世界初でした。日本との長年の関係があったからこそ、実現したのかなと思います。
映画サントラの次はコレ
── 『ボヘミアン・ラプソディ』で新しくファンになった方にオススメしたい、クイーンの楽しみ方はありますか?
手軽なところだとYouTubeのクイーン公式チャンネルは凄いですよ。ありとあらゆる映像が大量に公開されているので、おそらく見るほうも追いつかないと思います。全て観た人はいないんじゃないかってくらいの充実ぶりで、ファンの熱量に対する受け皿がいっぱい揃っています。YouTube以外にDVDや書籍も沢山出ていますし、今はクイーンを知れば知るほど楽しくなる素敵な環境だと思います。
『ボヘミアン・ラプソディ』は、本編を観て終わりじゃないと思うんです。映画をきっかけにクイーンの色々なことが知りたくなりますよね。ある種、続編がもう揃っているみたいなもので、「もっと観たい!」「ありますよ!」っていう(笑)。『輝ける日々』というドキュメンタリー作品は、映画の「その後」までを描いています。この作品は泣いちゃうからもう観れないっていうファンの方もいらっしゃいます。正直、クイーンのドキュメンタリー形式の映像作品としては、これ以上のものは無いと思います。傑作です。

それからライブ映像でオススメしたいのは、映画のクライマックスにもなったライヴ・エイドのフル映像が入った『伝説の証 ~ロック・モントリオール1981&ライヴ・エイド1985 』です。特にモントリオールのライブ映像はフィルムからリストアしているので、今のライブ映像かと思うくらい綺麗です。ライヴ・エイドの映像はリストアこそされていませんが、ブルーレイで比較的綺麗です。映画本編からはカットされた「愛という名の欲望」と「ウィー・ウィル・ロック・ユー」も入っていますし、フレディとブライアンがあの日の夜に「悲しい世界」の弾き語りをした映像も入っています。それから、ブライアンとロジャーのオーディオコメンタリーも入っていますね。
オリジナル・アルバムも聴いて
── 映画がきっかけでファンになった新しい世代が、また次の世代にクイーンの伝説を受け継いでいくのでしょう。
『ボヘミアン・ラプソディ』は、大ヒット作品でありながらカルト映画でもあると思うので、ずっと受け継がれていく作品だと思います。
1975年の初来日から、フレディの死があって、そして現在まで。思えば、こんなにファンの皆さんに熱く長く支えられてるバンドも珍しいのではないでしょうか。今回の映画の大ヒットや再びのクイーン・ブームについてはファンの皆さんのおかげだとおもいます。メンバーのイラストを描いてSNSで広めてくださったり、若いファンの方にこんなトリビアがあるよって伝えられたり、テレビ露出も皆さんで楽しんだり、親子で映画を見て一緒に音楽を楽しんだり、口コミでクイーンを知らない方に映画の素晴らしさを伝えて頂いたり、ここまで広がったのは確実にファンの皆さんのおかげです。昔からのファンの方も、新しいファンの方も、「もう1回観よう」、「もう1回聴こう」って、こんなにクイーンを愛してくださって、本当にありがたいです。
新しくクイーンにハマった方は、是非オリジナル・アルバムも聴いてみて頂きたいです。全15枚あるので、全て味わい尽くすと奥深いです。もちろん、ストリーミングでも嬉しいですし、歌詞が知りたければCDには対訳つきの歌詞カードがついています。今は色んな聴き方があるので、皆さんの聴きやすいもので聴いて頂ければ。歌詞を読むと、クイーンは本当にいろんなことを考えていたんだな、ということが分かります。逆に、考えてなかったんだなって曲も(笑)。CDに対訳は入っていないんですが「アラビアっぽいロックって良いよね!やってみよう!」な「ムスターファ」とか、「自転車って良いよね!」な「バイシクル・レース 」とか(笑)。
曲やアルバムによって色々な濃淡が楽しめるところがクイーン最大の魅力だと思うので、オリジナル・アルバムを全部聴いて頂けたら本当に嬉しいです。アルバムの一枚一枚にクイーンの歴史が詰まっているので、メンバーやフレディも喜ぶはずです。CD、ダウンロード、ストリーミング配信、色々な形がありますが、聴いて頂けるならどんな形でも嬉しいです。違法ダウンロードはアーティストにお金が入らないのでそれ以外の方法なら何でも大歓迎です。クイーン公式YouTubeチャンネルにもコンテンツがかなり充実しています。是非、たくさん聴いてください!
UNIVERSAL MUSIC JAPAN クイーン 公式ページ:https://www.universal-music.co.jp/queen/
クイーン 公式YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/queenofficial?gl=JP&hl=ja
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