『リメンバー・ミー』の原案、アメリカ人の少年が主人公だった ─「死者の日が意味するものとは全く相反する」

ディズニー&ピクサーによるアニメ『リメンバー・ミー』(2017)といえば、メキシコの文化や家族を題材にした映画だが、共同監督のリー・アンクリッチによると、オリジナルストーリーではメキシコ人の少年ではなく、アメリカ人の少年が主人公だったのだという。
『リメンバー・ミー』はミュージシャンを夢見るひとりの少年、ミゲルを主人公とした作品。ある日、家族の掟で音楽を禁じられているミゲルは、ガイコツたちが楽しく暮らす美しい死者の国に家族から逃げるように迷い込んでしまう。しかし日の出までに元の世界に帰らなければ、ミゲルは永遠に家族と別れることになってしまうのだ。そこからミゲルは死者の国にいる人々と協力しながら、生者の国に戻るため奮闘していく。
これが完成した映画の簡単なあらすじだが、原案は異なる内容だったようだ。Cinema Blendのインタビューにてアンクリッチ監督が以下のように原案の内容を説明している。
「8カ月ほどかけて作った最初の物語では、同じように男の子が主人公でしたが、アメリカ人の男の子で、アメリカ人の父親がいました。メキシコ出身の母親がいたのですが、物語が始まる直前に亡くなってしまいます。死者の日に父親が少年を連れて、メキシコに行くことになり、そこでメキシコ人の家族と初めて会うという物語でした。メキシコで不思議なことが次々と起こり、少年は死者の国へ行くことになるのです。しかしこの物語では、エルネスト・デラクルスなどは登場せず、この少年が母親が亡くなったことを理解し、彼女に別れを告げて、彼女を手放すという冒険映画でした。」
『リメンバー・ミー』のモチーフとなったメキシコに実在する“死者の日”とは、死者を称え、感謝し、生きる喜びを共感し合うことを目的とした祝日だ。しかし、それは死者たちを手放すという意味ではないことに、アンクリッチ監督は研究を重ねていくにつれて気付かされたのだという。
「ある時、“死者の日”が意味するものとは全く相反する物語になっていることに気づきました。なぜなら、“死者の日”とは、決して手放さないという意味が込められているからです。先祖を思い出し、その記憶を絶やさないようにすることが大切なのです。私たちは当初、死者を手放し、そして悲しむという、アメリカ的、西洋的な観点から物語を語ってしまっていたわけです。それに気付いたとき、最初から考え直す必要があると思いました。」
この新しい視点が加わったことにより、メキシコを舞台に、メキシコ人の家族に生まれたひとりの少年が、美しき死者の世界を通して家族の絆と向き合う物語が完成したわけだ。その結果、メキシコでも記録的な興行収入および高い評価を獲得したのである。
『リメンバー・ミー』はディズニープラスで配信中。
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Source: Cinema Blend