巨匠リドリー・スコット、スター・ウォーズを撮るのは「危険すぎる」 ― ルーカスフィルムの姿勢を疑問視

『エイリアン』(1979)、『ブレードランナー』(1982)と映画史に残るSF映画を生み出した巨匠リドリー・スコットが、もしも『スター・ウォーズ』を撮ることになったら……?映画ファンにとっては奇跡のコラボレーションだが、リドリーは自分が『スター・ウォーズ』を撮るのは「危険すぎる」と考えているようだ。
米Vulture誌のインタビューに登場したリドリーは、現在のルーカスフィルムによる『スター・ウォーズ』の作り方に懐疑的な視線を送っている。
「危険すぎる」その理由は?
自身が製作総指揮を務めた『ブレードランナー 2049』(2017)の話題につづき、「ルーカスフィルムからスター・ウォーズのオファーを受けたことはあるんですか?」と尋ねられたリドリーは、そうした事実がないことをきっぱりと明言。「僕が撮るのは危険すぎますよ」と答えたのだった。
「僕は自分がやってることを理解していますから(笑)。彼ら(ルーカスフィルム)は自分たちで主導権を握りたいんだろうし、僕も自分が主導権を握りたいしね。低予算映画を成功させたヤツを連れてきて、いきなり1億8,000万ドル渡すなんて、まったく理にかなってませんよ。マジでバカげてる。」
さすが巨匠ならではというべきか、怖いもの知らずの言いたい放題はさらに続いている。
「映画の再撮影にいくらかかるか知ってますか? 数百万(ドル)ですよ、数百万。僕にもっとギャラを払えますよ、それくらいかかるわけです。僕は予算も時間も守りますけどね。」
しかし発言の裏側には、ハリウッドのスタジオ・システムや、現在の若手監督の成長ステップに対する思いがあった。
「大切なのは経験、それだけのことですよ! つまらない話ですが、きちんと経験を積んで、自分の仕事を理解することが不可欠なんです。だんだん成長していくべき。低予算から始めて、少しずつ規模を大きくする。2,000万ドルのあとは8,000万ドル、とかね。でも、いきなり1億6,000万ドルはダメですよ。(スタジオに)殺されてしまう。」
『スター・ウォーズ』シリーズを手がけるルーカスフィルムは、このところ起用した監督との間に複数のトラブルを引き起こしている。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のギャレス・エドワーズ監督はディズニー/ルーカスフィルムの意向に沿えず、新たな統括係(トニー・ギルロイ)による大幅な再撮影を余儀なくされた。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年6月29日公開)ではフィル・ロード&クリス・ミラー監督が降板し、ベテランのロン・ハワード監督が後任を務めている。『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は脚本・監督のコリン・トレボロウが離脱、『フォースの覚醒』(2015)のJ・J・エイブラムスが急遽再登板しているのだ。
リドリーの指摘は、クリエイターの作家性をルーカスフィルムが受け入れられないという意味では非常に真っ当だろう。しかし一方で、ルーカスフィルムは低予算映画から人材をいきなり抜擢してきたわけではない。ギャレス、フィル&クリス、コリンの3組は、みな大作映画や中規模映画をきちんと経験してきたクリエイターだ。むしろ、ルーカスフィルムと相思相愛の関係を結べた『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督こそ、リドリーのいう“低予算映画からいきなり大作映画へ”というコースに乗った人物なのである。しかし、すべては相性なのだとしたら、それこそ残酷な話ではないか。
シリーズ最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2017年12月15日より全国の映画館にて公開中。
Source: http://www.vulture.com/2017/12/ridley-scott-all-the-money-in-the-world-reshoots.html
Eyecatch Image: Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/6852647452/ )