巨匠ジョージ・A・ロメロ、初期代表作の「幻の完全版」発見される ─ 3時間半、全編モノクロ映像

『ゾンビ』(1978)などで知られるホラー映画の巨匠、故ジョージ・A・ロメロ監督がキャリア初期に手がけた代表作のひとつ『マーティン/呪われた吸血少年』(1977)の“幻の完全版”が発見された。
『マーティン/呪われた吸血少年』は、血を吸う欲望を抱えた若き青年マーティンが、“いとこ”である老人のクーダに監視されながら、ペンシルバニアの町で生活する物語。自分の衝動を抑えきれず、吸血を続けていたマーティンは、ある日ラジオで自らが吸血鬼であることを告白。人気者になったマーティンは、やがて衝動をコントロールし、普通の人間としての生活を送るようになっていくが……。
主にゾンビ映画の功績で知られるロメロ監督だが、本作は『ゾンビ』の直前に製作された青春ホラー。『ゾンビ』以前の初期作としては、『ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖』(1973)などに並ぶ代表作として評価されている。ただし、ロメロは本作を全編モノクロ作品にしたかったが、プロデューサーと折り合いがつかず、カラー映画(一部シーンはモノクロ)として公開された。完全版は失われたとみられていたが、このたび長さ3時間半、全編モノクロ映像のディレクターズ・カットが発見されたのである。
完全版の発見を報告したのは、『マーティン/呪われた吸血少年』で撮影監督を務めたマイケル・ゴーニック(Facebookの“ロナルド・ゴアウッド”は別名義と報じられている)。このディレクターズ・カットは、今後、プロデューサーであるリチャード・ルビンスタインによって管理され、デジタル復元されて世界公開される可能性があるとのこと。公開から半世紀近くが経過して、ロメロの思い描いたビジョンがついにお披露目となるかもしれない。
2021年、ロメロは1973年の未発表映画『アミューズメント・パーク』が世界各国でリリースされ、日本では劇場公開された。また、生前最後の企画だった『トワイライト・オブ・ザ・デッド(原題: Twilight of the Dead)』も映画化企画が本格的に動き出したことがわかっている。2017年の逝去から5年、ロメロ作品はこれからも映画界に影響を与え続けていくことになりそうだ。