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ネコ科の専門家、『RRR』ビームに「トラが出ても絶対に走るな」と忠告

RRR
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もしもネコ科の専門家が、インドの大ヒット映画『RRR』(2022)を観たら? あらゆる分野の専門家が、映画のワンシーンを考証する米Insiderのシリーズ企画「How Real Is It」にて、ピューマ(マウンテンライオン)の専門家である生物学者マーク・エルブロック氏が自身の見解を語った。

分析の対象となったのは、野性あふれる男・ビームの初登場シーン。ジャングルでオオカミに追われていたビームが、そのオオカミを追うトラに追われて死闘を繰り広げる場面だ。「大作映画がトラの攻撃を描くとき、最大の問題は“音”です」とエルブロック氏は指摘する。確かに、多くの映画に登場するトラは、獲物を襲うときに唸ったり咆哮したりしている。

「そもそも、狩りをするときのトラは完全に静かです。自らの存在を獲物に悟らせない。トラが現れてオオカミに襲いかかるとき──トラの狩りについて最も重要なことは、彼らが爪や歯だけでなく、全身を使っていること。自分の体重だけで動物の首を折ることもあるんです。」

ビームはオオカミとライオンから逃れるべく、命懸けでジャングルを疾走する。しかし、エルブロック氏は「絶対に走ってはいけません」と忠告。走って逃げることが、むしろ大型肉食動物に“狩り”の反応を引き出すことになるからだという。もっとも、走り出してしまったあとも勝算はある。「トラは肺が非常に小さいので、短時間で息切れを起こします。だから、狩りのときは爆発寸前なんです」と語る。

すなわち、大切なのはきちんとスタートダッシュを決め、トラが息切れを起こすまで逃げ続けることだ。「彼らは、すぐに獲物を捕らえられないときは諦めます。有利なスタートを切り、トラを800メートルほど走らせることができたら逃げ切れるでしょう。人間の身体は長距離走に向いていますからね」。

激しい追跡劇ののち、ビームはトラに追いつかれて爪の攻撃を受ける。それでもロープをつかんで戦いを続けるビームに、「何度も引っかかれて立っていられるはずがない」とエルブロック氏は思わず笑った。「トラの爪は出し入れ自由で、リラックスしているときは収まっているけれど、獲物を捕らえるときや攻撃するときには、鋭いナイフのように切り傷を負わせるのです。爪の一撃は完全な致命傷になるでしょう」。

最後にエルブロック氏は、『RRR』のトラの描写について「(10点満点中)7点です」とそのリアリティを評価。ディズニーの“超実写”映画『ライオン・キング』(2019)の8点には及ばなかったが、かなりの高得点となった。むしろリアルでないのはトラよりもビームの方かもしれないが、そこを指摘するのは野暮というものだろう。

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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