『アベンジャーズ』ルッソ監督がスパイダーマンのMCU離脱騒動に驚かない理由 ─ 「そもそもが難しすぎた」

ディズニー/マーベル・スタジオとソニー・ピクチャーズが『スパイダーマン』映画の契約条件をめぐって対立し、スパイダーマンがマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を離脱すると報じられた一連の騒動は、世界中のファンや関係者を驚かせた。
しかしながら、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)でスパイダーマンをMCUに招き入れ、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でもスパイダーマンを描き続けたアンソニー/ジョー・ルッソ監督は、この騒動にさほど驚いていないのだという。一体、その胸中とは。
ルッソ監督はどう見るか
スパイダーマンのMCU参戦は『シビル・ウォー』が初。ソニーが権利を有するはずのスパイダーマンを、マーベル・スタジオ/ディズニー作品に登場させるという奇跡的な業務提携によって実現していた。
スパイダーマンのMCU参加について「極めて情熱的だった」と言うアンソニー・ルッソは、まず「こうなるべきだと望んでいたし、マーベル内部では長い間ずっと戦ってきたものです」と振り返る。米Daily Beastに語っている。
スパイダーマンは『シビル・ウォー』以降、『インフィニティ・ウォー』や『エンドゲーム』でも活躍。さらに、ソニー側による『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)と『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)にMCU側のキャラクターが登場するコラボレーションが続いたが、ジョー・ルッソは「簡単なことではありませんでした」と総括している。
その背後では、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギが「色々と頑張ってくれていたんです」と、影の努力があったことを明かす。いよいよ不和をきたした結果、「対立」とまで呼ばれるこの度のMCU離脱騒動が招かれた結果となった。ジョー・ルッソはこう説明する。
「かなりの紆余曲折があって、(ファイギは)我々のオフィスにもずっと来てくれていました。こちらが”ソニーと何とかしないと”と言うと、彼は”オーケー、何とかしてみる”と言って自分のオフィスに帰っていって。出口を探っていたんですね。」
ファイギが求めたのは、「スパイダーマンは必要ない!」と言える状況だったという。「なぜなら、大企業同士が互いにうまくやっていくのには、仕事が多すぎるんですよ。今回の出来事が起こって、我々は少し時間が出来たことを祝うべき。」その上でアンソニーは、「ジョー(・ルッソ)と僕が、この対立にそこまでショックを受けたり驚いていないのはこういう理由ですね。そもそもが難しすぎたんですよ」と実情を吐露している。
この騒動の根底には、スパイダーマンの資本関係をめぐるマーベル・スタジオ/ディズニーとソニー・ピクチャーズの意見の食い違いがある。ディズニーが『スパイダーマン』映画について50対50の資本関係を求める一方、ソニー側は公開初日の5%、および関連商品売上利益の全額という条件維持を求めていた。
この経済的な対立が大きな要因であることは事実だろうが、ルッソ監督の供述は両社の実務的な利害関係が一致しない裏側を明かしている。マーベル・スタジオ/ディズニーが展開するMCUは今後も多数の映画・ドラマ作品を予定しており、マーベル側はこれら全作を手掛けるケヴィン・ファイギの多忙を懸念しているとされる。加えて、あくまで他社であるソニー側との調整を行いながら『スパイダーマン』を手掛け続けるのには、ジョー・ルッソの言うところの「仕事が多すぎた」というわけだ。
この騒動を受けてケヴィン・ファイギは以前、スパイダーマンとの協業は「決して実現するとは思っていなかった夢」であり「永遠に続くということを意味してもいませんでした」と語っているが、この度のジョーからは「全ての物事が永遠ってわけじゃない」と、同じ趣旨の言葉も口にされている。
ソニー・ピクチャーズの会長兼CEOであるアンソニー・ヴィンシクエラ氏は、両社の契約交渉が既に終了していることを明かしており、トム・ホランドは今後もスパイダーマン役を続けたいとしている。ルッソ監督らマーベル・スタジオにとって、スパイダーマンは今後「親愛なる隣人」の位置に戻っていくのだろう。
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Source:Daily Beast