実写ドラマ化も話題の『三体』とは何か?早川書房編集者が語る「海外SFとして異例の盛り上がり」

日本でのダントツ人気キャラは?
邦訳版は早川書房にとっても記録的なヒットとなった。「もちろん自信はありましたが、ここまで手に取っていただけるとは、嬉しい誤算。予想外でした」と梅田氏。海外SF作品としては、2002年と2015年に日本でテレビドラマ化もされた『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス)以来の反響ではないか、という。「海外SF単行本で、ここまで手に取っていただける作品は、なかなかありません」。日本では、シリーズ合計で累計80万部を突破している。
『三体』の数ある魅力のうちの一つは、複数の時代にまたがる壮大で複雑な人間模様だ。親の世代のドラマが子孫の世代の戦いに影響することもある。胸熱い友情から、巧妙な駆け引きと心理戦、ロマンチックで切ない恋愛劇まで、色彩豊かに描かれる。
葉文潔、楊衛寧、汪淼……。中国名のキャラクターは頭の中で読みが定着しづらいが、読むうちに慣れてしまうものだ。魅力的なキャラクターたちが数多く登場するから、お気に入りにも出会えるだろう。梅田氏によれば、興味深いことに国によって人気キャラクターが異なるらしい。
例えば本国である中国では、『三体Ⅲ 死神永生』の中心人物となる程心(チェン・シン)は不人気で、ファンのお気に入りは羅輯(ルオ・ジー)。欧米圏ではトマス・ウェイドが人気なのだそう。それでは、日本の読者に一番人気なキャラクターは?
「ダントツでダーシー(史強)です。男性も女性も、老若男女、みんなダーシーが好きなイメージ」。タフな元警官で、『三体II 黒暗森林』で主人公となる羅輯の警護を務める。「ちょっと粗暴だけど、すごく頼り甲斐があって、苦しい時に駆けつけてくれる。実写版でどう映像化されるかが楽しみですね」。
全巻を読み終えて”三体ロス”な読者には、梅田氏が「世界で最も成功した二次創作」と称する番外編『三体X 観想之宙』がオススメだ。『三体』の熱狂的なファンである宝樹氏が、本編を読み終えた喪失感を埋めるために勝手に書いた独自の物語が、著者・劉慈欣の公認を得て本家版元から正式刊行されたという異例作。「こういうのが読みたかった!解釈一致だ!というファンの方も多いです。読まれましたら、ぜひ感想を教えてくださいね」。
これから『三体」を読み始めれば、Netflix版実写ドラマの配信までに十分間に合うはずだ。原作を制覇して、この世界最大級の「大きいSF」映像化を、世界中のファンと一緒に堪能したい。『三体』を読み始めるビギナーに向けて、梅田氏はこう紹介する。
「得難い読書経験が得られる作品です。『三体』を読んだら、読書に対する思いが変わるほどだと思います。確かに全5冊ありますから、非常にボリュームのある作品ではありますが、その分の読み応えがあります。
実は『三体』は、電子書籍で読む方の割合がすごく大きいんです。それから、オーディブル(音声版)も好評です。いろいろな楽しみ方があり、気軽に読み始めることができますよ」。
『三体』は早川書房よりシリーズ発売中。待望の実写ドラマ「3 Body Problem(原題)」は2023年、Netflix独占配信予定だ。