マーベル「シークレット・インベージョン」現代のテロリズム描く政治スリラーに ─ 「今、この時代を参照した作品です」

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の新作ドラマ「シークレット・インベージョン」は、史上屈指の異色作となる大人向けのサスペンス・スリラー。『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)が政治的陰謀や監視社会を、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)が政府への信頼をテーマに置いたように、今回は“テロリズム”が主題のひとつとなる。
本作では過激派のスクラル人がひそかに地球侵略を進める中、ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)とスクラル人のタロス(ベン・メンデルソーン)が危機を防ぐため動き出す。英Empireにて、監督のアリ・セリムは「誰がテロリストで、なぜテロリストになったのか?」というポイントが作品の核だと語った。
「ここアメリカでは、とりわけ“我々は善人で、彼らはテロリストなのだ”ということを言いやすいものです。私が興味を抱いたのは、“我々は国民国家として、彼らの生まれ育った環境にいかなる影響を与えたのか”ということでした。」
セリム監督は、ピュリッツァー賞に輝いたノンフィクション作品を原作に、アメリカ同時多発テロの背景をさまざまな角度から描き出した「倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道」(2018)などで知られるフィルムメーカー。まさしく本作にふさわしい人材だろう。
物語のキーパーソンは、地球侵略を企てるスクラル人レジスタンスのリーダー、グラヴィク(キングズリー・ベン=アディル)。以前はタロスの派閥に属していたものの、離反して実力行使に訴える道を選んだ人物だ。セリム監督は「グラヴィクは爆弾を持った悪役じゃない」と言い切る。「なぜ彼がこのような行動に及んだのか、その物語をきちんと掘り下げます。今、この時代を参照した作品です」。

既報によると、グラヴィク率いるレジスタンスは、ロシアの廃棄された核施設に拠点を置いている設定。製作にあたっては、ジョン・ル・カレのスパイ・スリラー小説や、ドラマ「HOMELAND」(2011-2020)「ジ・アメリカンズ」(2013-2018)、さらに『第三の男』(1949)のような古典的スパイ・ノワール映画も参考にされたという。
しかし、こうしたジャンル性を打ち崩していくのが主人公のニック・フューリーだ。セリム監督によると「ニックが動きはじめるとノワールから西部劇になる」とのこと。「彼は悪を追い詰めるべく大通りを進む孤独なガンマン。『第三の男』から始まり、『捜索者』(1956)のジョン・ウェインになっていく」というから、サミュエル・L・ジャクソンの魅力が映えるアクションにも期待したい。
ドラマ「シークレット・インベージョン」は2023年6月21日(水)よりディズニープラスにて独占配信。脚本は「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」(2015-2019)のカイル・ブラッドストリートが執筆した。
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Source: Empire