会員登録

Search

【ネタバレ】『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』カメオ解説 ─ 公開直前に急遽追加、別ユニバースとつながる?

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
(C)2023 CTMG. (C) & ™ 2023 MARVEL. All Rights Reserved.

この記事には、映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のネタバレが含まれています。

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
©2023 CTMG. © & ™ 2023 MARVEL. All Rights Reserved.

実写で登場、ドナルド・グローバー

『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』と前作『スパイダーバース』の大きな違いは、アニメーション映画でありながら、実写映像を大胆に織り込んでいるところ。実写版『スパイダーマン』シリーズの映像だけでなく、劇中には新規撮り下ろしの実写映像も使用されている。

そのうちのひとつが、「アトランタ」(2016-2022)『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)で知られるドナルド・グローバーの実写出演だ。スパイダーマン/マイルス・モラレスが訪れたスパイダー・ソサエティの本部にて、次元を超えて出現したため捕まったプラウラー役を演じている。プラウラーは前作のヴィランのひとりで、その正体はマイルスの叔父アーロン。ドナルドの出演は一種のユーモアだが、本作でもプラウラーの存在は物語のカギとなっている。

監督のひとり、ケンプ・パワーズによると、ドナルドの出演シーンは完成直前に急遽追加されたもの。撮影は公開の約2ヶ月前にあたる2023年4月5日に実施されており、作業も佳境の中、製作・脚本のクリス・ミラーがニューヨークのスタジオへ飛び、同じく製作・脚本のフィル・ロードとパワーズが画面越しに演出をつけたという。「ギリギリ間に合いました。観客を入れた試写でさえ、ドナルド・グローバーの部分は仮の画像だったんです」とパワーズは語る。

ドナルド・グローバー
Photo by NASA HQ PHOTO https://www.flickr.com/photos/nasahqphoto/20716556524/

もっとも、ドナルドの登場はユーモアながら、単なるユーモアとも言い切れないのがポイントだ。ドナルドはマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)版『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)にアーロン・デイヴィス役でわずかに出演しており、このアーロンこそ、コミックでもマイルス・モラレスの叔父で、実はヴィランのプラウラーである人物。前作『スパイダーバース』の展開はコミックに忠実なものだったのだ。

『ホームカミング』のアーロンはプラウラーではなかったが、ドナルドが本作にプラウラーとして再び姿を見せた以上、この2人が同一人物、すなわちMCUからの刺客である可能性は高い。なにせ、製作・脚本のクリスは「ドナルド・グローバーをアニメーションで登場させることは考えませんでした。それでは彼のキャラクターが本来存在したユニバースに忠実じゃないから」述べているのである。やはり『ホームカミング』のあと、アーロンは人知れずプラウラーとなり、次元を超えてミゲルに捕まったのだろうか?

ちなみにフィル&クリスとドナルドは浅からぬ関係にあり、ドナルドがランド・カルリジアン役を演じた『ハン・ソロ』は、当初2人が監督・脚本を務めるはずだった。しかし撮影の大部分が終了した時点で、ルーカスフィルムがフィル&クリスを解雇。映画は大幅な再撮影を経て、後任のロン・ハワードの手で完成したのである。

ドナルドの『アクロス・ザ・スパイダーバース』出演は、その後も良い関係にあったフィル・クリスが個人的に連絡を取ったことで実現したもの。アイデアを伝えたところ、前作のファンだったドナルドは喜び、“子どもたちを驚かせたい”との理由で出演を快諾したという。プラウラーのスーツは、通常なら製作に数ヶ月以上かかってもおかしくないところ、デザイナーのトレイス・ジジ・フィールドによってわずか数週間で仕上げられた。

デザイナーのフィールドは、フィル&クリスの手がけるドラマ「アフターパーティー」(2022-)で衣裳を担当。ドナルドの出演作品『私にもできる!イケてる女の10(以上)のこと』(2013)にも参加しており、彼とは実に10年ぶりの再タッグとなった。

この投稿をInstagramで見る

Trayce💄(@traycegigifield)がシェアした投稿

ちなみに、もう一人の実写出演者である『ヴェノム』シリーズのチェンさん(ペギー・ルー)のシーンは、新たに撮り下ろされたものではなく、未使用映像を再構築して制作されたもの。ドナルドほどギリギリではなかったようだが、ザ・スポットとの共演シーンは製作の比較的後半に追加されたものだという。

ヴェノム
©&TM 2018 MARVEL

映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は2023年6月16日(金)より公開中

Source: Variety, The Hollywood Reporter, Rolling Stone

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly