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『007 スペクター』MI6部長・Mが悪役になる可能性あった ─ M役レイフ・ファインズ、「それは演じたくない」と抵抗

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
Credit: Nicola Dove / © 2019 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.

『007』シリーズを代表するキャラクターのひとり、ジェームズ・ボンドの上司である英国秘密情報部(MI6)部長“M”が、悪役としてボンドの前に立ちはだかる可能性があった。『007 スペクター』(2015)の製作秘話を、M役のレイフ・ファインズが米Happy Sad Confusedにて語った。

レイフが演じた『007 スカイフォール』(2012)から『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)までのM/ギャレス・マロリーは、『007』シリーズにおいて“M”の4代目。バーナード・リー、ロバート・ブラウンに続き、長年M役を演じたジュディ・デンチからバトンを受け取っての就任となった。引き継ぎが行われた『スカイフォール』を手がけたサム・メンデス監督のアイデアにレイフは惹かれたようで、「サムの知性やアプローチ、仕事ぶりを尊敬します。『スカイフォール』は素晴らしい脚本でした」と話している。

もっとも、『スカイフォール』に続く『スペクター』で“Mを悪役として描いてはどうか”と考えたのもメンデスだったようだ。レイフは「『スペクター』のときはサムと戦わなければなりませんでした」と明かしている。

「僕が言ったのは、“Mの方向性を変えて悪い奴にするなんて、そんなMは演じたくない”ということ。Mは決して悪人じゃない。だから、サムとは真剣に議論しなくてはいけませんでした。“これは僕には受け入れられない”と言いましたね。彼がブロフェルドにせよ何にせよ、それは超えてはいけない一線だと思いました。」

メンデス監督との議論が、創作のどの段階で行われたのかはわからない。レイフの「彼がブロフェルドにせよ何にせよ」という発言からは、M/ギャレス・マロリーが巨大組織「スペクター」のボスであるエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドだったという展開が考えられていた可能性も垣間見える(ブロフェルド役はクリストフ・ヴァルツが演じた)。また本作には、実はスペクターに通じている人物として、英国保安局(MI5)のメンバー・“C”(アンドリュー・スコット)も登場。この役割をM/ギャレス・マロリーが担うこともありえたのかもしれない。

もし『スペクター』でMが悪役になっていた場合、おそらくレイフのMとしての出番はそこで終わっていただろうし、Mの役目は別の人物が再び引き継いでいたはずだ。しかし、続く『ノー・タイム・トゥ・ダイ』でダニエル・クレイグがボンド役を卒業したことを鑑みれば、その意味でもMが悪役に転じなかったことは正しい判断だっただろう。『スペクター』や『ノー・タイム・トゥ・ダイ』で新たなMの一面を見ることができたのも、レイフによる交渉の結果だというわけだ。

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Source: Happy Sad Confused

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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