スティーブン・スピルバーグ、Netflix作品のアカデミー賞締め出しを否定か ─ 友人の映画プロデューサーが証言

巨匠監督スティーブン・スピルバーグが、アカデミー賞のノミネート条件変更を自身が提案するという報道を否定しているようだ。この動きはNetflix作品のオスカー締め出しを意図するものではないかとして、米国をはじめ世界各国で賛否を呼んでいた。
「そんなことはまったく言っていない」?
2019年3月8日(米国時間)、テキサス州オースティンでのフェスティバル「サウス・バイ・サウスウエスト」に、スピルバーグの友人でありドリームワークス・アニメーションCEOのジェフリー・カッツェンバーグ氏が登壇。スピルバーグが「アカデミー賞にはより長期の劇場公開作品がふさわしい」との意向を示しているという件について、スピルバーグの思いを代わりに伝えた。
「昨日、この件についてスティーブンと話しました。具体的に尋ねてみたのですが――(この話題に)私はこれ以上かかわりませんよ――スティーブンは、“僕はそんなことはまったく言っていない”と言っていました。実際のところ、彼は何も言っていません。
つまり、ジャーナリストがスティーブンについてのデタラメや噂話を耳にしたということです。そして広報担当者にコメントを求めたわけですが、それは曲解されてしまった。第一に、スティーブンはそんなことは言っていません。第二に、彼がアカデミーに対して計画のようなものを4月(編注:アカデミー理事会)に提案する予定はありません。ただし彼は意見することもなければ、特定の物事に賛成することもしません。」
つまりジェフリー氏によれば、スピルバーグがノミネート条件の変更をアカデミー側に提案する予定はなく、すべては報道によって生じた誤解だというのだ。確かに、きっかけとなった米IndieWireの記事には“スピルバーグがアカデミーへの提案を行う”との内容が記載されていた。ここで、スピルバーグの製作会社アンブリン・エンターテインメントによる声明を再度確認しておきたい。
「スティーブンはストリーミング配信と劇場公開の違いを強く感じています。提案の際、ほかの方が(スティーブンの取り組みに)加わってくだされば、彼は喜ぶことでしょう。どんなことが起こるのか、彼は様子を見ることになります。」
当時の記事内容やアンブリンの声明文に、IndieWire側の解釈や編集がどこまで加えられていたのかはわからない。したがって、これについては続報を待つことになるだろう。ただし、スピルバーグが2018年3月に“Netflix作品はオスカーにふさわしくない”との考えをはっきり示していたことも事実だ。
「テレビのフォーマットに作品を委ねたら、それはテレビ映画です。優れた番組はエミー賞には値しますが、オスカーにはふさわしくない。いくつかの映画館で1週間未満の上映をして、形だけの資格を得た映画が、アカデミー賞のノミネートに適しているとは思いません。」
スピルバーグがジェフリー氏に伝えたという「そんなことはまったく言っていない」という言葉の“そんなこと”とは、いったい何を指すものだろうか。「アカデミーに条件の変更を提案するとは言っていない」なのか、「アカデミー賞には長期の劇場公開作品がふさわしいとは言っていない」なのかで、その意味は大きく変わってしまう。アンブリンの声明をIndieWireが掲載したのも、スピルバーグの意思をジェフリー氏が代わりに話したのも伝聞とあっては、もはやスピルバーグの真意をきちんと判断することはできない。ひとまず、「スピルバーグが4月の理事会でノミネート条件の変更を提案することはない」ことだけは確かといえるのだろうか。
なお一連の報道は、映画館とストリーミング配信について、そして変化を迎える映画界について、ベン・アフレックやクリストファー・ノーランなど多くのフィルムメーカーを巻き込んだ議論へと発展しつつある。転換期を迎える映画業界において、スピルバーグやアカデミー賞、Netflixという各個人や団体・企業にとどまらず、より広い視野で注視すべき問題であることは確かだ。
Source: THR