『スタンド・バイ・ミー』牛乳代返すも裏切られたクリスの涙、リヴァー・フェニックスに監督がかけた言葉とは

映画『スタンド・バイ・ミー』では、田舎に住む少年たちの刺激的な2日間の冒険が描かれた。森の奥で発見された死体を探す旅に出たゴーディ、クリス、テディ、バーンの4人。この道中で、少年たちは傷ついた心を互いにさらけ出す。
中でも象徴的な場面といえば、なかなか寝付けなかったゴーディ(ウィル・ウィトン)と、見張り番をしていたクリス(リヴァー・フェニックス)の会話シーン。家族との確執もあり未来に悲観的なクリスは、信頼を置くゴーディに、大人からの裏切りを語る。クリスはくすねてしまった牛乳代をこっそりと返したのにもかかわらず、結果それは担任のスカート代へと変わり、そのまま汚名を着せられたのだ。勇気を振り絞って一歩踏み出した途端、大人に裏切られたクリスが「だれも僕を知らない土地へ行きたい」と呟きながら涙した姿は、世代を問わず多くの者に訴えかけるものがあった。
公開から30年が経った2016年、米Varietyの特別インタビューで当時を振り帰ったロブ・ライナー監督は、牛乳代を巡るこのシーンでクリスを熱演したリヴァー・フェニックスの感情を引き出すために、とある言葉をかけていたという。「リヴァーは何度か(このシーンを)やりました」と語るライナー監督。「なかなか感情がこもらなかったんです。そこで私は彼を脇に連れて行って、こう伝えたんです」と続け、結果的に名演技に導くこととなった言葉を以下に明かしている。
「“それが何なのかは言わなくていいけど、とにかくこう考えてみて。君にとって大切な大人が君を失望させてしまって、君自身を助けてくれなかったと感じた時のことを”。この後に撮ったテイクが、映画でのものです。その時彼が何を考えたのかは分かりません。もしかしたら父親か母親だったかもしれませんね。どうでしょう、(リヴァーは)僕に教えてくれませんでしたから。」
リアルな感情を引き出すべく、一種のメソッド演技を活用することでリヴァーを奮い立たせたライナー監督。思えばリヴァーは、家族7人強い絆で結ばれた共同生活を送ってきた。のちにリヴァーの父親は、ハリウッドで成功した息子のライフスタイルの変化に悩み、アルコール依存症となってしまうのだが、そうした父親の姿を『スタンド・バイ・ミー』の頃のリヴァーはつゆ知らず。信心深かった両親を慕っていたはずだ。
1993年、23歳だったリヴァーは突然の死を迎えた。『スタンド・バイ・ミー』出演からわずか7年後のことだ。リヴァーの死から1年後の1994年、母親のアイリンが米Esquireのインタビューで語ったところによれば、『スタンド・バイ・ミー』以降、ハリウッドの引っ張りだことして多忙を極めていたリヴァーが、ある意味では劇中でのクリスと同じ悩みを抱えていたことが分かる。
「リヴァーは成長するにつれて、どんな良いことのためでもあったとしても、看板少年になることを心地よく感じなくなっていったと思います。彼はよく、匿名でいられたら良いのにと言っていました。けど決して彼はそうではなかった。映画スターじゃないときの彼は、伝道師でしたから。大義を背負った男、つまりリーダーの中には美しさもありましたが、その一方で深い孤独もあったんです。」
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Source: Variety,The Guardian