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『スター・ウォーズ』幻のルーカス製作ドラマ、とんでもない巨大構想とは ─ 「マンダロリアン」の15年前に始動、脚本40本完成していた

ジョージ・ルーカス
Photo by James Santelli/Neon Tommy https://www.flickr.com/photos/neontommy/6339542462

2019年、『スター・ウォーズ』シリーズ初のドラマシリーズ「マンダロリアン」がDisney+にて配信され、高い評価を得た。しかし遡ること15年、プリクエル3部作の製作まっただなかであった2004年に、創造主ジョージ・ルーカスは自らのドラマ企画を始動させていたのである。「スター・ウォーズ アンダーワールド(Star Wars: Underworld)」と題されたそのシリーズは、ディズニーのルーカスフィルム買収によって実現の機会を失ってしまったのだが……。

当時、この作品の脚本家チームの一員として招かれていたのが、「新スタートレック」(1987-1994)「GALACTICA/ギャラクティカ」(2003-2009)のロナルド・D・ムーア。米Colliderのインタビューでは、ルーカスによる巨大な構想や、作業の進捗などが明かされている。

「世界からたくさんの脚本家が集められていて、僕はそのうちの一人でした」。ムーアによると、脚本家チームはおよそ6~8週間に一度、ルーカスフィルム本社(スカイウォーカーランチ)に集まり、ストーリーの開発にあたっていたそう。会議が終わると、それぞれが草稿を執筆して、再び持ち寄る。それをルーカスが確認し、コメントして、新しい草稿を作り、物語を深めていく。「とても楽しかった、最高でしたね」とはムーア氏の談だ。「40本…48本くらいかな、みんなで脚本を書きました」

すでに伝えられているところによると、「スター・ウォーズ アンダーワールド」は、『エピソード3/シスの復讐』(2005)から『エピソード4/新たなる希望』(1977)の間に起こった出来事をフィルムノワール調で描く作品になる予定だった。ルーカスは完成していた40本の脚本から、ひとつの巨大なストーリーライン」を作ろうとしていたという。

「もともと、ジョージが自分で脚本をすべて書き上げたがっているという話もありました。けれど彼はそれを諦めて、どうやって製作するかを考えていた。彼はCGやバーチャルセットなど、最先端のテクノロジーを扱いたがっていましたから。まったく新しいものをやり遂げようとしていたんです。」

「マンダロリアン」は最新のゲームエンジン、VR技術を駆使して撮影が行われたことでも話題を呼んだが、なんとルーカスは、当時から同じような構想を立てていたのである。そのビジョンにあらかじめ制約を加えたくなかったのか、ムーアによると、脚本家チームには“予算のことは考えずに書くように”とのお達しが出されていたという。

「やりたいと思うだけ、規模が大きいものを書いてくれと言われました。あとのことはそれから考えると。僕たちはみんな、テレビや映画の経験を積んだ脚本家だったので、製作費の面で実現可能なものを書くことに慣れています。でも今回は彼の言葉をそのまま信じて、とんでもない、大スケールのものを書こうと。だからアクションもセットも、ド派手な見せ場もたっぷりのものにしました。普通のテレビ番組よりもずっと大規模でしたね。」

その後、ルーカスは企画の実現に向けて撮影方法などの検討に入った。ルーカスは「今のところはこれで十分」との理由で脚本家チームを解散し、「また連絡する」と一同に伝えたそう。しかし、その約1年後にルーカスフィルムはディズニーに売却され、40本以上におよぶ脚本は残念ながら日の目を見ていない。ムーアは現在でも、ルーカスの抱いていた巨大な構想が印象に残っているようだ。「あれはとんでもない仕事でした。(ルーカス以外に)誰か引き受けられる人がいるのかどうか、僕にはわかりません」

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Source: Collider

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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