本当の脅威は内側にいる…閉鎖空間の恐怖を描いた映画『TANK 432』がトラウマになりそう
英国の劇作家、ウィリアム・シェイクスピアがこんな言葉を残している。
Present fears. Are less than horrible imaginings.
眼前の恐怖も、想像力の生みなす恐怖ほど恐ろしくはない。
そんな、想像や、あるいは妄想が生み出す恐怖を描いた映画を、今回はご紹介したい。
『キル・リスト』(Kill List)や『サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド』(Sightseers)などで知られるイギリスの映画監督ベン・ウィートリー(Ben Wheatley)がエグゼクティブ・プロデューサーを務め、彼の長年に渡るコラボレーターでもあるニック・ギレスピー(Nick Gillespie)の監督デビュー作ともなる『TANK 432』(タンク432)である。ちなみに原題は『Belly of the Bulldog』。

出演は『ヘルボーイ』(Hellboy)のルパート・エヴァンス(Rupert Evans)、『The Chariot』のスティーヴ・ギャリー(Steve Garry)、TVシリーズ『The Frankenstein Chronicles』のディアドレ・マリンズ(Deirdre Mullins)、そして『ロブスター』(The Lobster)のマイケル・スマイリー(Michael Smiley)。
その予告編が公開されているので、興味のある方はご覧いただきたい。
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=ITIA-vZyS9k?rel=0]
敵の包囲下の中、どこにも隠れる場所のない草原に放棄された1台の戦車。追手から逃れるために、2人の捕虜を連れた傭兵グループは、その戦車の中に身を隠すのだが・・・。彼らの逃げ込んだ場所は聖域なのか、あるいは監獄なのか。閉じられた空間で増幅してゆく恐怖、本当の脅威は外にいるものなのか、あるいは内側にいるのか。そんな物語である。

閉ざされた狭い空間に長時間いなければならないというシチュエーションでは、たとえ自身が閉所恐怖症でなくとも、ストレスや不安、そして恐怖が増幅しがちである。ましてやそれが戦場という特殊な空間であった場合には、なおのこと。
様々な『恐怖症』
余談であるが、閉所恐怖症(claustrophobia)とはいわゆる恐怖症の一種であり、閉ざされた狭い空間や場所にいることに対して心理学的および生理学的に異常な恐怖を感じる症状のことである。恐怖症の英語名には必ずフォビア(phobia)という言葉が付けられている、閉所恐怖症で言うならば「クラウストロフォビア」。このフォビアとは古代ギリシア語で恐怖を意味する言葉であり、ギリシャ神話に登場する恐怖の神「ポボス」(φόβος,、phobos)がその語源であると言われている。
恐怖症の中には様々なものが確認されていて、例えばある意味では閉所と逆の広場恐怖症(Agoraphobia)というものや、その他にもよく耳にしがちな対人恐怖症や高所恐怖症、特殊なものだと道化恐怖症(Coulrophobia)やクモ恐怖症(Arachnophobia)なんてものも存在する。ジョニー・デップが重度の道化恐怖症だという話は有名である。
また後者のクモ恐怖症は「アラクノフォビア」というカタカナ表記で呼ばれることもあり、1990年のアメリカ映画、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮、そしてフランク・マーシャルの初監督作品でもあるスパイダー・パニック映画の代表作『アラクノフォビア』にもタイトルとして掲げられている。
さらに、この『TANK 432』という作品のタイトルに関しての余談になるが、劇中で登場する戦車はFV432というイギリス陸軍の装甲兵員輸送車のようである。これはFV430シリーズの一種であり、愛称として「トロウジャン」(Trojan)と呼ばれている。トロウジャンとはギリシャ神話に登場するトロイヤ人を意味するそうである。

そういったサイドディッシュも踏まえつつ本作品を鑑賞すると、また違った発見があるかもしれない。
予告編に登場する不気味なマスクの男、その恐怖の正体は・・・、ぜひ本編の内側にて。
