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『ザ・フラッシュ』まさかの低調スタート、その要因は ─ 『ブラックアダム』以下の数値に業界驚き

ザ・フラッシュ
(c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved (c) & TM DC

宣伝上の事情もある一方で、『ザ・フラッシュ』の作品の性質についてもいくつかの指摘がある。例えば、『ワンダーウーマン』のように女性客への訴求が弱いことや、マルチバースやマイケル・キートン復活が見どころとなった『ザ・フラッシュ』は、一般の映画ファンには話題がややディープすぎたこと、かといってDCファンにとってはシリーズのリセット前の作品に意義が見出しづらいこと(これは『シャザム!〜神々の怒り〜』でも見られた問題)などだ。

今のところ『ザ・フラッシュ』の興収については悲観的な見通しが大きくなっており、このままでは最終的に赤字に終わった『ブラックアダム』(世界累計3億9,325万ドル)に近いものになるだろうと見られている。公開3週目となる6月30日には『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』も上映開始となり、話題性もますます縮小する。

『マイ・エレメント』も不調スタート、ハリウッドに暗雲

なお、アメリカでは2位発進となったディズニー&ピクサー『マイ・エレメント』の成績も厳しいものがある。事前の予測値では3,100万〜4,100万ドルのオープニング成績が見込まれていたが、蓋を開けてみると2,950万ドルと低調スタート。これはピクサー史上最悪の発進だ。イルミネーションの『ザ・スーパーマリオ・ブラザーズ・ムービー』が1億4,636万ドルだったことと比較すると、同じファミリー向けアニメ作品で差をつけられたことがわかる。

ディズニー&ピクサー作品に対しては、コロナ禍で『ソウルフル・ワールド』(2020)『あの夏のルカ』(2021)『私ときどきレッサーパンダ』(2022)を相次いでディズニープラス配信公開に切り替えたことで、劇場上映への期待が薄れてしまったとの指摘がある。前作『バズ・ライトイヤー』(2022)はコロナ禍後初の劇場公開作となったが、『トイ・ストーリー』ブランド作であるにも関わらず、1億600万ドルの赤字を計上している。

『ザ・フラッシュ』や『マイ・エレメント』の本国での低調は、事前プロモーションの重要性が改めて学ばれる機会となり、また有名ブランド作品だからといって必ずしも観客が劇場に足を運ぶわけではないということを、数字と共に物語っている。

これからサマーシーズンが到来すれば、『インディ・ジョーンズ』や『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』、『オッペンハイマー』、『バービー』といた大作が続々と米公開される。万全の体制での公開が望まれるところだが、一方で重大な懸念事項が残っている。全米脚本家組合(WGA)がストライキを行っているのに加えて、俳優らが参加する労働組合SAG-AFTRAも、新契約締結をめぐって7月1日からストライキに突入する可能性があるのだ。そうなった場合、俳優たちは映画のプレス活動に参加しないこととなり、これは宣伝広報にとって頭痛の種となる。

ストライキはまだ確定したものではないが、すでに『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』は、7月に予定していたプレスジャンケット(インタビュー取材の場)を6月に変更するなど、先を見越した動きが見られている。米ワーナーの『オッペンハイマー』や『バービー』は7月の広報活動を予定しているので、インタビュー取材やレッドカーペットが行えないなどの影響を受ける可能性がある。

Source:Deadline,Variety,Box Office Pro

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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