『MEG ザ・モンスター』徹底解説 ─ ジェイソン・ステイサムvs巨大ザメのあらすじ、小ネタ、出演者まで

2020年8月8日にフジテレビ系土曜プレミアムで地上波初放送となる映画『MEG ザ・モンスター』(2018)は、ジェイソン・ステイサムが古来の巨大ザメ「メガロドン」と決死のガチンコ対決を繰り広げる、夏にオススメ・ド迫力・超大型海洋パニック・巨大ザメ・アクション映画だ。
“超巨大ザメ vs ステイサム”という組み合わせは大きな話題を呼び、全米では『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018)の3週連続首位を阻止して初登場1位。全世界42か国で公開されると累計興行収入4億ドルを突破し、『ジョーズ』(1975)の興行収入を超え、サメ映画の歴史を塗り替える世界的大ヒットとなった。
この記事では、あらすじ紹介、作品解説、キャスト情報や監督紹介まで徹底解説。鑑賞のお供に、是非役立てて頂きたい。
目次
『MEG ザ・モンスター』あらすじ
潜水艇のSOSを受けて東シナ海の海溝に潜ったレスキュー・ダイバー、ジョナス・テイラー(ジェイソン・ステイサム)は、そこで信じられないほど巨大なサメ、メガロドン……通称MEGを目撃する。しかし信じる者はひとりもおらず、彼は同僚を死なせた責任を取り、海難救助の一線から退くことになる。
5年後。大陸から200キロ離れた中国・上海の海洋研究施設「マナ・ワン」で、探査船がマリアナ海溝の海底探査を、行っていた。探査艇は定説上海底とされていた地点よりも更に深い未知の領域へと進み、研究チームは歓喜に包まれるが、その直後に探査船は消息を絶ってしまった。未知の海溝だけに捜索は簡単ではなく、タイで暮らしていたジョナスに白羽の矢が立てられる。
「マナ・ワン」ではジャン博士の娘スーインが先に海底に向かっており、ジョナスも後を追う。すると、5年前に遭遇したあの巨大なサメ MEGが再び姿を現わす。このサメは200万年前に絶滅したはずの史上最恐、最大の古代生物。研究所のスポンサーは、この世紀の大発見を儲け話に換えようと、ジョナスの反対の声も聞かず、捕獲を命じる。すると研究施設はMEGの暴走によって無残に破壊され、海洋に投げ出された彼らの身に危険が迫る。人類は、この脅威から逃げ切ることができるのか……。

作品解説
原作小説と、海底で待ち続けた映画化企画
原作は1997年の小説『Meg: A Novel of Deep Terror』。映画化は小説の刊行当初からずっとくすぶっていた企画だ。1996年の時点でディズニー傘下ハリウッド・ピクチャーズが映画化権を獲得していたが、脚本がうまく仕上がらず、後に『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 』(1989)などのジェフリー・ボームが再執筆を試みたが、こちらの原稿も却下された。この時の企画はうまくいかず、1999年までに映画化権利は原作著者のスティーヴ・オルテンに戻された。
2005年にニュー・ライン・シネマ製作での再企画の話題が浮上。『スピード』(1994)や『ツイスター』(1996)のヤン・デ・ボンが監督で、プロデューサーにはギレルモ・デル・トロを迎えて2006年の公開を目指していたが、後に予算上の都合からキャンセルに。権利は再びオルテンの元に戻る。
2015年になるとワーナー・ブラザースに権利が移り、メガロドンが再び目を覚ます。はじめは『ホステル』シリーズなどホラー・スリラー作品で知られるイーライ・ロスが監督就任の交渉に入ったが、方向性の違いにより決裂。やがてジョン・タートルトーブ監督や主演のジェイソン・ステイサムらの参加が決定し、2018年夏にようやく公開を迎えることができた。
海底のさらに下部に潜んでいた劇中のメガロドンさながら、浮上の時をずっと待っていた『MEG』映画化企画。製作には中国資本(グラヴィティ・ピクチャーズ)も入り、舞台は中国・上海に、主要キャラクターは中国系キャストとなった。アメリカでの興行収入は1億4,500万ドル、中国はこれを上回る1億5,300万ドルのヒットを記録した。

太古の巨大ザメ「メガロドン」とは
約1,800万年前から約150万年前に実在したとされる、史上最大級のサメ。全長はなんと23メートル、これは大型バス2台分に匹敵する。映画公式サイトには、「巨大なホオジロザメを丸呑みする」「MEGの歯は人間の手のひらと同じ大きさで、それが276本ある」「MEGの顎の幅は3.3メートル以上ある。それは人間の平均身長の約2倍である」「サメは1日に23キロ MEGは1,100キロ食べる」といった化物のような情報が紹介されている。
メガロドンの1日の必要摂取カロリーは850,000Kcalとのこと。ある研究によると、成人男性を1人まるごと食べて得られるカロリーは81,500kcal。人間だけを食べるとすれば、単純計算で1日およそ10人分ということになるから、メガロドンにとって人間はちょっとしたチョコバーくらいの感覚であろう。

温暖な海域に生息していたと考えられ、メガロドンの歯は南極大陸を除く全ての大陸で発見されているという。絶滅の理由には諸説あり、海水温の低下や、捕食するクジラが寒冷海域に逃げ込んだためとするものや、シャチの祖先やホオジロザメなどの競合種に淘汰されたとの考えもある。
江戸時代の日本では出土したメガロドンの歯の化石が「天狗の爪」と考えられ、伝説や信仰の対象ともなっていた。
『ジュラシック・パーク』との共通点
古代の巨大生物と人間が激突するパニック映画とあって、『ジュラシック・パーク』と比較する声もある。実際にジョン・タートルトーブもこの点を意識しているようだ。「『ジュラシック・パーク』はタイムトラベル映画。人間がタイムトラベルするでなく、モンスターが時間を越えて来る。そこが面白い。本作も話は同じです」。
ちなみに『ジュラシック・ワールド』(2015)にも他の恐竜を丸呑みにする巨大海洋恐竜「モササウルス」が登場するが、こちらのデータ上の体長は約16〜17メートル。メガロドンは23メートルほどあったとされるから、モササウルスよりデカい。
笑ってはいけない海水浴場シーンの難しさ

見せ場のひとつとなるのが、三亜湾の海水浴場に現れたメガロドンが、大量の海水客を襲い出すシーン。のんびりバケーション気分の人々の元にサメが到来するという、これぞサメ映画の醍醐味のような場面だが、舞台は中国。とにかく人が多いとあって撮影も一筋縄ではなかった。
監督によれば、「まず最初にやったのは、メガホンを使って北京語で叫べる人を雇うこと」。そして最も難しかったのが、「サメが来てるから、命がけで泳いでくれと大量の人(=エキストラ)に指示しても、そのうち500人くらいはニヤけてたり笑ったりしちゃう」というものだ。その後の編集工程で、エキストラ一人ひとりの「間抜けな顔や笑顔」を描き変えるのが非常に大変だったという。
サメ映画元祖『ジョーズ』へのオマージュ
タートルトーブ監督は本作にサメ映画の起源『ジョーズ』(1975)ネタがあることを認めており、「分かりやすいのもあるし、とても個人的なものもある」と明かす。「“怒られないかな?”ってちょっとビビったやつもあります。でも、サメ映画をやるんだったら、“これ『ジョーズ』じゃね”って言われるのは避けられないし」。
分かりやすいものとしては、健気に泳いでいた小型犬の「ピピン」。『ジョーズ』にもスピルバーグ監督の愛犬が「ピペット」の名で登場しており、これが元ネタと考えられる。
なお『MEG ザ・モンスター』は、日本公開をもって全世界興行収入が『ジョーズ』を越え、サメ映画史上ナンバーワンとなった。『ジョーズ』にオマージュを捧げたポスター画像も公開されている。

リー・ビンビンの決死
ヒロインの海洋学者スーイン・ザン役を演じた中国の人気女優リー・ビンビンは、本作のオファーを受けた当初は出演を断っていたという。その理由は「サメ映画だったから」というもので、米メディアの取材に「しっかり考えるまでもなくお断りしたんです。だって、サメ映画だったから……」と赤裸々に答えている。
体が冷える水中での撮影をおそれたという。「中国では、寒いのは健康に悪いと信じられているんです。みんな、いつでもお湯を飲むし、温かいものを食べたがるものなんですよ」。
本人は断り続けたが、それでもオファーが止まず、根負けして出演を決めた。しかし、その後も苦労が続いたようだ。英語ネイティブではないにも関わらず、英語のセリフを覚える期間が2週間しかなかったことや、水中で檻に入れられて5、6メートル沈められる撮影では息が続かずに「死ぬかと思った」「水から出た時に監督がすごく褒めてくださったんですが、私は喋れないほど弱っていた」といったエピソードを振り返っている。もっとも、撮影を終えてからは「すべてが最高だったと思っていますよ」と満足できたようだ。
出演者・キャスト、吹き替え声優
ジェイソン・ステイサム(ジョナス・テイラー役)

イギリス出身、ハリウッドきってのアクションスター。『トランスポーター』シリーズ、『アドレナリン』(2006)、『エクスペンダブル』シリーズ、『ワイルド・スピード』シリーズなどなど、主にボルテージ全開のアクション映画で知られる。
日本のネット界でも「俺は自分がハゲだってことを神に感謝してるぜ そもそもこの俺に髪の毛なんて似合わない」との発言が地上波テレビで紹介されたキャプチャーが有名。
『MEG ザ・モンスター』では海中アクションを披露したステイサムだが、実は元飛び込み選手という経歴の持ち主。当時の映像も残っている。
2000年のガイ・リッチー監督作『スナッチ』で評価され、以降は主にアクション映画の数々で活躍。『エクスペンダブル』シリーズでスタローンやドルフ・ラングレン、シュワルツェネッガーらに交じったことで、アクションスターのハリウッド“代表”の一角たらしめた。
『ワイルド・スピード』シリーズは途中参加ながら、ドウェイン・ジョンソンとタメを張ったスピンオフ作『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)が製作されるほどの人気キャラクターに成長。今後もその続編が控えるなど、熱い活躍が続く。
リー・ビンビン(スーイン・ジャン役)
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中国出身の女優で、漢字表記は李冰冰。1973年生まれ。主に中国で映画・ドラマの数々に出演した後、2008年の『ドラゴン・キングダム』でハリウッドデビュー。ジャッキー・チェンとジェット・リーが共演したカンフー映画で、ビンビンは白髪の魔女ニチャンを演じた。その後も『バイオハザードV リトリビューション』(2012)や『トランスフォーマー/ロストエイジ』(2014)に出演している。
『MEG ザ・モンスター』 ではウィンストン・チャオ演じるミンウェイ・ジャン博士の娘を演じたが、実は父役チャオとは13歳しか変わらない。
レイン・ウィルソン(ジャック・モリス役)
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海洋研究施設「マナ・ワン」に出資する大金持ちの役。演じたレイン・ウィルソンはドラマ「ザ・オフィス」(2005-2013)ドワイト役でエミー賞コメディシリーズ部門最優秀助演男優賞に3度ノミネート。「スタートレック:ディスカバリー」(2017)などで活躍しており、『トランスフォーマー/リベンジ』(2009)や、ジェームズ・ガン監督の『スーパー!』(2010)主人公役でも知られる。
ルビー・ローズ(ジャックス・ハード役)
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モデルとしても活躍するローズは、涼しげで中性的な魅力を活かして『バイオハザード: ザ・ファイナル』(2016)『トリプルX:再起動』(2017)や『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)、『ピッチ・パーフェクト ラストステージ』(2017)に続々と出演。TVドラマでは「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」(2015-2016)に登場し、DCドラマシリーズではバットウーマン/ケイト・ケイン役の出演が話題に。単独ドラマ「BATWOMAN/バットウーマン」(2019-2020)シーズン1では主演も務め、セクシャル・マイノリティのスーパーヒーローとして注目を集めたが1シーズン限りで降板。撮影中の怪我による緊急手術や、SNS上での激しいバッシングなど苦労が多かった。
ウィンストン・チャオ(ミンウェイ・ジャン博士役)
1960年生まれ、台湾出身。中国版「孤独のグルメ」の台湾編で主人公の伍郎を演じている(日本版は松重豊)。キャリア最初期に出演したアン・リー監督作『ウェディング・バンケット』(1993)がベルリン国際映画祭は金獅子賞を受賞した。ジャッキー・チェン主演作『1911』(2011)では孫文を演じており、本作で娘スーインを演じたリー・ビンビンとも共演している。
ペイジ・ケネディ(DJ役)
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デトロイト生まれ。西ミシガン大学在学中に演劇とシェイクスピアの世界に出会った。医者の父から医学の勉強を勧められたが、ケネディは演技の道を志したということだ。「NYPD BLUE ~ニューヨーク市警15分署(シーズン11)」などドラマ作品で磨き、『S.W.A.T.』(2003)で映画デビュー。ラッパーとしての顔も持つ。
マシ・オカ(トシ役)
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「ヤッター!」のセリフが有名なドラマ「HEROES/ヒーローズ」(2006~2010)でブレイクした日本人俳優。インダストリアル・ライト&マジック(ILM)社では『スター・ウォーズ』プリクエル3部作のVFX部門やデジタルアーティストを務めていた。
『ゲット スマート』(2008)や「HAWAII FIVE-0」(2010-2017)など俳優としての出演も多いが、近年ではプロデューサーやアドバイザーなど裏方の活躍に精力的。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』続編や、ロックマンのハリウッド実写版『Mega Man(原題)』、『進撃の巨人』ハリウッド実写版にも携わっている。
ソフィア・ツァイ(メイイン役)

2008年生まれ。中国人の母とイギリス人の父を持ち、中国語も英語も話す。2歳の頃から中国のTVコマーシャルで子役として活動している。映画デビューは『あの場所で君を待ってる』(2015)。
出演者・キャスト、吹き替え声優 一覧
キャラクター名 | キャスト | 日本語吹替声優 |
ジョナス・テイラー | ジェイソン・ステイサム | 山路和弘 |
スーイン・ジャン | リー・ビンビン | 魏涼子 |
ジャック・モリス | レイン・ウィルソン | 伊藤健太郎 |
ジャックス・ハード | ルビー・ローズ | 清水はる香 |
ミンウェイ・ジャン博士 | ウィンストン・チャオ | 加藤亮夫 |
ジェームズ・“マック”・マックライズ | クリフ・カーティス | 川島得愛 |
メイイン・ジャン | ソフィア・ツァイ | 佐藤美由希 |
DJ | ペイジ・ケネディ | あべそういち |
ヘラー医師 | ロバート・テイラー | 世古陽丸 |
ウォール | オラフル・ダッリ・オラフソン | 田所陽向 |
ローリー | ジェシカ・マクナミー | 吉田麻実 |
トシ | マシ・オカ | 白石兼斗 |
ディアンジェロ | ロブ・キパ・ウィリアムズ | 橘潤二 |
マークス | タワンダ・マニーモ | 宮崎聡 |
監督 ジョン・タートルトーブ

1963年8月8日生まれ、ニューヨーク出身。監督デビューは1990年の『バーバリアン・ブラザースのシンク・ビッグ』。キャリア初期には、日本人の祖父から武道を学ぶ3人の兄弟を描く『クロオビキッズ』(1992)も撮っている。代表作はニコラス・ケイジ主演の『ナショナル・トレジャー』(2004)とその続編『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』(2007)。
リリース情報
『MEG ザ・モンスター』のブルーレイ&DVDは2019年1月に発売されている。4K ULTRA HD&ブルーレイセット、3D&2D ブルーレイセットも登場している。ニュージーランドで行われた撮影風景のほか、迫力満載の超巨大ザメ「メガロドン」再現の舞台裏、そしてメイキングシーンなど、貴重な映像特典が収録されている。
『MEG ザ・モンスター』映像
予告編映像
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製作陣の解説映像
特別映像Discovery編
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Source:SyfyWire,CinemaBlend,Yahoo Entertainment,CNN