極寒の雪山から生還せよ! 『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』イドリス・エルバ&ケイト・ウィンスレット、絶体絶命の人間ドラマを噛みしめる

© 2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
2019年の早々から、映画ファン注目のサバイバル映画が日本に上陸する。『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』は、『マイティ・ソー』シリーズや『パシフィック・リム』(2013)のイドリス・エルバ、『タイタニック』(1997)や『愛を読むひと』(2013)のケイト・ウィンスレットという名優二人が織りなす“絶体絶命の人間ドラマ”だ。
撮影自体が超過酷だったという雪山の壮大なロケーション、観客を作品世界に引き込むアクションやスタントの数々、そしてその中で丁寧に描かれる人間ふたりの関係性。この記事では本作の魅力とともに、ドラマティックな撮影秘話をあわせてお伝えしていくことにしよう。
初対面の男女、決死のサバイバルに挑む
『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』の物語は、ある冬の空港から始まる。翌日にボルチモアで手術を控えた外科医のベン・バス(イドリス・エルバ)、同じくニューヨークで結婚式を挙げるジャーナリストのアレックス・マーティン(ケイト・ウィンスレット)は、搭乗予定の飛行機が嵐のために欠航となり、それぞれ帰ることができなくなってしまったのだ。
困り果てた二人が選んだのは、小型機をチャーターして目的地へと急ぐこと。しかし離陸してしばらく経ったあと、パイロットが突然の心臓発作に襲われ、コントロールを失ったチャーター機は墜落してしまう。重傷を負った二人は、極寒の雪山で目覚める。まったく違う人生を歩んできた初対面のベンとアレックスは、たった二人きりで、協力しながら生きて帰ることができるのか……。
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本物の雪山で撮影、撮影チームも決死のサバイバル
極限状態のサバイバル活劇であり、確かな演技力を誇る俳優同士による繊細な人間ドラマである『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』を手がけたのは、『パラダイス・ナウ』(2005)や『オマールの壁』(2013)でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたハニ・アブ・アサド監督。企画を受けた時点から、CG合成ではなく実際の雪山で撮影することを望んだという。
物語の舞台となるのはユタ州の雪山だが、撮影地として選ばれたのはカナダ、アルバータ州・ブリティッシュコロンビア州の州境だった。撮影チームは約1ヶ月にわたって、毎日ヘリコプターで高度3,300メートルまで上っている。時には気温が氷点下40度まで下がったという過酷な環境だ。

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雪山は超極寒、天候も不安定
『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』では、主人公のベンとアレックスにいくつもの試練が襲いかかる。そんな、ひとつ間違えば命を落とす生還への旅路は、まさしく「決死のサバイバル」な状況下で撮影されていたのである。劇中でイドリスやケイトが見せる表情は、“ほとんど本物”とすらいっていいだろう。
米USA Todayの取材で、アサド監督はその極寒ぶりを「口が利けなくなるし、目を閉じると水分が凍って目が開かなくなる」ほどだったと語った。また米Hollywood Lifeによれば、撮影中は温かくすることが一番の課題だったそう。なにせ超低温のため、カメラが凍って動作しなくなってしまうのだ。撮影スタッフの中には、カメラを抱きながら寝袋で眠っていた者もいたという。しかも雪山での撮影は、天候にも大きく左右された。
「(雪山は)天気が変わりやすいので、毎朝6種類の進行予定表を作っておかなければならなかったんです。あらゆる天候に対応できるよう、それぞれ違う撮影予定を組んでいました。」
本作で撮影監督を務めたのは、『ドリーム』(2016)などのマンディ・ウォーカー。「極寒の雪山でたった二人きり」という絶望感とともに、雪山や自然の雄大さや美しさを見事に切り取った。ベンとアレックスが厳しい状況に追い込まれるなか、風景が対照的な輝きを放つことで、人間にはとても抗えない圧倒的な威厳と存在感が示されるのだ。

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「本物の映画を作りたい」
現在の映像技術ならば、本作のような映画を全編スタジオで撮ることもできる。それでも雪山での撮影にこだわったのは、ベンとアレックスが味わう体験に観客を放り込みたい、製作チームは実際にその場に身を投じなければならないという考えがあったからだった。米Business Insiderにて、アサド監督は撮影への強い意志を語っている。
「本物の映画を作りたいと思いました。スタジオでグリーン・スクリーンを使って(雪山の映画を)撮影しても、ショットやレンズ、照明について本物の決断を下すことにはなりません。でも現場で撮影すれば、すべての決断が本物になる。お腹は空くし、寒いし、全員が同じ状況ですから。俳優もわざわざ嘘をつかなくて良いですしね。」

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実際に、アサド監督は撮影現場でのこんなエピソードを語っている。
「全員で現場を歩いて移動して、撮影の準備をした後に“このアングルじゃない。あと800メートル歩こう、背景に山が欲しい”と言ったことがありました。スタッフは僕に向かって“無理です!”って叫んでいるし、プロデューサーも“無理だよ!”って。罪悪感はありましたけど、僕は“もう撮り始めてるんだから、やろうよ”と言いましたね。」
ちなみにアサド監督は、数少ないスタジオでの撮影となった映画冒頭の飛行機墜落シーンでも驚異的なこだわりを発揮。実に4分半におよぶ長回しは本作でも白眉の仕上がりだが、これは24回もの撮り直しを重ねた末にOKが出されたものだという。
イドリス・エルバ、ケイト・ウィンスレットによる極上の二人芝居
『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』を唯一無二の映画たらしめているのは、美しくも過酷な雪山をそのまま捉えた映像もさることながら、イドリス・エルバ&ケイト・ウィンスレットという名優ふたりのタッグだ。飛行機墜落を生き延びた二人のサバイバル、その中で急速に惹かれ合っていく二人の関係性に説得力を与えたのは、まごうことなくイドリス&ケイトの演技なのである。
ほとんど全編が二人芝居となっている本作では、物語をベンとアレックスが引っ張っていくことになる。イドリスとケイトは、それぞれ違った特徴をもつ登場人物の深みを巧みに引き出した。イドリスは無言の表情や視線がせりふ以上に多くを語り、ケイトは時に饒舌に、時に合間の静寂によって、自身の内面や相手への思いを吐露するのだ。

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イドリスとケイトは、撮影期間中は長時間をともに過ごすことで、本物の恋人同士のような関係性を築けるよう努めたそう。イドリスは「本物の関係とは言えないですが、そういう雰囲気はつかみました」と述べており、撮影を進めていく中では「どんなソファを買うのか、カップルが一緒に決めるような感じ」で判断を下す局面もあったと語っている。ただし、本作の撮影現場は非常に過酷な雪山である。やはり、ソファを一緒に選ぶことほど穏やかな状況ではなかったようだ。
「2メートルも雪が積もった上で一緒に凍えたことを覚えてます。そんな中で、“ウソだろ、もう1テイク撮らなきゃいけないの”って。これこそ本物の経験ですから。」
ちなみにイドリスとケイトは、雪山での激しいアクションシーンにも自ら挑戦している。アレックスが氷水に落ちるシーンでは、ケイトが低体温症になってしまうことをプロデューサーが心配する中、ケイトは自ら3回の撮り直しに臨んだそう。ちなみに、ケイトは米Entertainment Weeklyで「大変だったこと、怖かったことと同じくらい楽しい撮影でした」と話しているが、撮影監督のマンディ・ウォーカーには、こっそりと「『タイタニック』よりも大変だった」と明かしていたという。

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サバイバル劇、そして濃密な人間ドラマ
ここまで記してきたように、『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』は過酷な環境下をいかに生き抜くかという壮絶なサバイバル劇であり、同時に、二人の名優が丁寧に紡ぎ出す濃密な人間ドラマだ。イドリス・エルバ&ケイト・ウィンスレットという二人の主演俳優、そしてハニ・アブ・アサド監督をはじめとしたスタッフたちはその両立に全力を投じたのである。
極限状態から始まるベンとアレックスの命がけの旅は、二人がさまざまな試練を経験するうち、“雪山から生きて帰る”という展開にとどまらない複雑な関係性の物語へと転じていく。アサド監督が本作のオファーを引き受けたのも、まさにそうしたストーリーテリングの秘密にあったようだ。二人の男女の姿には、やがて“生きることとはどういうことか”というテーマすら浮かび上がってくる。

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『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』はサバイバルを描いた映画であり、同時にハードな人間の生そのものをあらゆる角度から映した一本だ。それゆえに監督は、荘厳で美しい自然、そこで生き延びようとする人間の姿や内面を、その場にいるかのように味わえる映画として撮ったのだろう。本作は、寒い冬にじっくりと噛みしめてほしい「大人のサバイバル映画」である。
なお本記事では映画の撮影秘話をたっぷりとご紹介したが、リリースされるBlu-rayには過酷な撮影の舞台裏をとらえた特典映像や、残念ながら本編からは削除されてしまった未公開シーンなどが収録されている。本編とあわせて、ぜひそちらもお楽しみいただければ幸いである。
『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』発売情報

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『ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間』
2019年1月9日(水)ブルーレイ&DVDリリース/先行デジタル配信中
ザ・マウンテン 決死のサバイバル21日間 2枚組ブルーレイ&DVD ¥3,990+税
公式サイト:http://www.foxjapan.com/the-mountain-between-us-jp
発売元・販売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
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Sources: USA Today, Hollywood Life, Business Insider, Collider, EW, stuff