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『ザ・ホエール』アロノフスキー監督に聞く「白鯨」の意味と、「ビジネスとアート」の両立【単独インタビュー】

ダーレン・アロノフスキー
© 2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

──娘エリー役のセイディー・シンクが本当に素晴らしかったと思います。彼女は父チャーリーにとって容易い相手ではなく、容赦無くて、そこが非常にリアルでした。

ザ・ホエール
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「ストレンジャー・シングス2」で初めて彼女を観た時に、ものすごく衝撃を受けたんです。それが全ての始まりで、どうしても彼女と仕事がしたいという衝動に駆られた。それでブレンダンの配役が決定した時、(セイディーと親子という設定に)とても納得感が生まれそうだと、すごく興奮しましたよ。彼女を選ぶことに一分の迷いもなかったし、絶対に彼女がよかった。素晴らしい女優であり、最高の仕事をしてくれたと思います。

──『ブラック・スワン』ではナタリー・ポートマンに、『レスラー』ではミッキー・ロークにオスカー像をもたらしましたね。そして本作では、ブレンダン・フレイザーが主演男優賞にノミネートされました。おめでとうございます(本インタビューはアカデミー賞授賞式前に行われました)。

そしてホン・チャウも。

ダーレン・アロノフスキー
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──助演女優賞にノミネートされました。おめでとうございます。ここまで来たら、俳優たちから「自分を起用してください!」ってラブレターが届くのでは?(笑)

あはははは(笑)。それはないんだけど、でも嬉しいですよ。俳優たちに最高の機会を与えることができて、その機会を最大限活かしてもらえるというのはね。

──ブレンダンとホン・チャウには、どのようなお祝いを?

みんなでたくさんのパーティーに出席したし、何度か乾杯して一緒に飲みましたね。良いことなんですけど、プロモーション活動ってすごく疲れるので(笑)。

──アカデミー賞の授賞式には出席されますか?

まだ分からないです。多分、家で観るかな。まだ決めてなくって。でも、終わったら絶対にお祝いしにいくつもりです。

(※その後、アロノフスキーは授賞式に出席。主演男優賞の名を呼ばれステージに上がるフレイザーを、嬉しそうに見守っていた。)

──ずばり、式典やパーティーの場などで会ってみたい方はいますか?

そうだなー、どうだろう。昨日の夜はサミュエル・L・ジャクソンにお会いしたけど、クールだったな。

──うわぁ、パーティーか何かで?

うん、パーティーで会ったんですけど、僕も興奮しましたね。ただ、僕もこの業界で長いから、いつも会うのは昔から知っている素敵な顔ばかりですね。

──ひぇー、サミュエル・L・ジャクソンとパーティーで会う……めっちゃハリウッドっすね……(笑)。

ウフフフフ(笑)。そう、これぞハリウッドでしょう(笑)。

──ところで監督、今度は『ブラック・スワン』の舞台化に向けて動いていらっしゃるということで、映画と舞台の相互作用が続きますね。

そうなんです。まだ取り組んでいる最中で、道のりは長い。全く異なる媒体、全く異なる世界、異なるアートなので、僕としては学びが多くて楽しいですね。『ブラック・スワン』は音楽も素晴らしいし、ダンスも素晴らしいので、全てがまとまれば素晴らしいショーになると思いますよ。

──いやー、日本語で、日本公演もやってくれませんか?

あぁ、日本でもやりますよ。

──えっ、本当ですか?

うん、そう思いますよ。ヒットすればね。ヘッヘッヘ(笑)。

──期待していますよ!さて『ブラック・スワン』といえば、『レスラー』も同様だったそうですが、製作費の資金調達が大変だったそうですね。『ザ・ホエール』ではいかがでしたか?

今回はA24が付いてくれていたので、ずっと楽でしたね。実際にうまくいきましたし、資金調達はさほど難しくありませんでした。ただ、全体予算としては非常に限られていたので、これを駆使してどう形にするかの方が難しかったです。

──監督は、ビジネスとアートをうまく両立させるフィルムメーカーの1人だと思います。この2つを扱うことって、やっぱり監督にとって重要ですか?

自分では、アートに集中したいなと思ってはいます。ただ、映画作りには多額なお金が伴うものだから、ビジネス面できちんと責任を持たなくちゃいけない。だからその部分の頭も働かせるわけだけど、できる限りはアートに集中するようにしています。

──ビジネスのために、アートを諦めなくちゃいけないようなことは?

しょっちゅうですよ。アートでは稼げないからね。

──しょっちゅう、ですか。妥協のようなものでしょうか。

うん、妥協することもあります。でも、自分が作りたい映画は、自分が作りたいからこそやっている。そこにこだわり、目の前にあるものを信じ抜くのみです。

──だからこそ、いつも素晴らしい作品が生まれるのですね。

わぁ、どうもありがとう。

──これは変な質問になるかもしれません。チャーリーは自分の余命がいくばくもないことを悟り、娘との関係を修復したいと望みました。もしも監督が余命5日しかないとしたら、何をしたいですか?

(しばらく考えて)いい質問だな……。多分、皆さんと同じだと思うんですけど、人生最後の5日には、大好きな人たちと一緒に遊びたいかな。それ以上、複雑なことはないと思う。

──今後の作品には、日本のホラー小説を原作とした『Adrift』が控えてらっしゃいますね。ジャレッド・レトと『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)ぶりの再タッグになる予定だそうですが。

あれはまだ脚本を進めている状態なんです。まだ正式なゴーサインが出ていないので、どうなるかはわかりません。次作を何にするかは、まだ固めていないんです。

──監督は数年前に『バットマン:イヤー・ワン』を『タクシードライバー』風に映像化する企画に取り組んでいましたね。しかしそれは結実せず、後に『ジョーカー』がまさに『タクシードライバー』風に映画化されることとなりました。もしも今後チャンスがあったら、またDC映画やスーパーヒーロー映画を手掛けてみたいと思いますか?

多分ね。良いキャラクターがいれば、ぜひ検討しますよ。

──楽しみにしています。ところで、日本を訪れたのはいつが最後でしたか?

コロナ前だったかな。前回は友達と、京都や東京に行って、友達と会ったっけな。正確には分からないけど、確か5~6年前だったと思います。もうずいぶん経ちますね。実はコロナの感染が拡大する直前にも日本を訪れる予定があったんだけど、残念ながらキャンセルせざるを得なかった。もう久しく行けていないから、日本の友人や東京が恋しいです。でも、いずれ戻るつもりですよ。多分、11月にでも。

──11月が楽しみですね!お時間になってしまいました。本日は本当にありがとうございました。

インタビューしてくれてありがとうございました。近いうち日本でお会いして、お話しできることを楽しみにしています!

ザ・ホエール
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『ザ・ホエール』は公開中。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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