【ネタバレなしレビュー】『ソー:ラブ&サンダー』爆笑と興奮、ホロリと涙の大満足作

2022年7月8日公開のマーベル・シネマティック・ユニバース最新作『ソー:ラブ&サンダー』は、稲妻のような面白さと感動が119分の全編にほとばしる超快作。ファンは間違いなく満足できるだろう。
物語は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)後。アベンジャーズの雷神ソーはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに加わって宇宙の各地で戦いの日々に明け暮れていたが、ふと自分の居場所を見失っていた。盟友スター・ロード/ピーター・クイルはガーディアンズの仲間に囲まれて幸せそうだ。一方ソーの人生には、思えば「愛」が欠けていた。これまでの戦いの中で、ソーは愛する父を失い、義弟(ロキ)を失い、アスガルドの地を失った。そして本作では、かつての恋人ジェーン・フォスターの存在もなぜ失っていたのかが、初めて明かされる。
そんな最中、銀河の神話世界を脅かす復讐の化身、ゴア・ザ・ブッチャーが出現。ゴアはかつて神の信奉者だったものの、その神に無慈悲にも見捨てられたことから、闇の力に取り憑かれ、“神殺し”を始めていた。ニュー・アスガルドがその標的になったとき、駆けつけたソーの前に意外な人物が姿を見せる……。
主演クリス・ヘムズワースが「ラブいっぱい、サンダーいっぱい」と予告していた通りのエンターテインメント作品。『ソー』シリーズ前作『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)から続投のタイカ・ワイティティ監督お馴染みのスベり知らずのギャグは全編に散りばめられ、前半はずっと笑わされっぱなしだ。カメオネタや、コアなファンがクスリとできるイースターエッグも楽しく配置されている。

ワイティティ作品の魅力は、その一方で、笑いだけにとどまらない。アカデミー賞脚色賞に輝いた『ジョジョ・ラビット』(2019)で見られたように、彼は生きることの喜びや儚さ、哀しさも愛のブラシで立体的に描く。すでに明かされているように、本作ではナタリー・ポートマンが演じるジェーンが「マイティ・ソー」として君臨するが、そこでは非常にメロディアスな物語が奏でられる。『ラブ&サンダー』とはえらく能天気な副題だが、観終えた後には堪らなく愛おしい副題に生まれ変わる。

アクションはシリーズ最高レベルまでにパンプアップ。聖闘士星矢よろしくゴージャスにアップデートされたアーマーで大暴れするソーの姿には、改めて彼こそがゴッド・オブ・サンダーなのだと感服させられる。劇薬的にカラフルなアクションもあれば、あるシーンでは白黒の世界でスタイリッシュなバトルも展開。縦横無尽のカラーパレットはまるで魔法だ。
MCU初参戦となったクリスチャン・ベールが演じるヴィランも素晴らしい。ワイティティ監督は、“神殺し”の異名を持つゴアに単なるヴィラン以上のレイヤーを与えており、「これまでで最も共感できるヴィラン」に仕上げるという試みが奏功した。ベールは背筋も凍るような怪演を披露。その猟奇的な恐ろしさは、かつて彼がバットマン俳優だったことを完全に忘れさせるほどだ。

観終えた方と語り合うのが待ち遠しい作品だ。ソーやコーグといった愉快な仲間たちに大笑いさせられ、ド派手なバトルシーンでは息を呑み、かと思えばホロリと泣かされる。どこを切り取っても贅肉が1グラムたりともない。ソーの肉体のようにシェイプアップされたマッチョなマーベル体験ができる最新作『ソー:ラブ&サンダー』は2022年7月8日、降臨。例によって、エンディングの最後の最後まで見逃さないで。
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