『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』に『ブレードランナー』が与えた影響 ― 衣裳製作アイデアより

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』には、スター・ウォーズと同じくSF映画史に大きな影響を与えた作品『ブレードランナー』(1982)の影響が表れているという。ライアン・ジョンソン監督が明かしている。
レイアのコート、監督のイメージは『ブレードランナー』
『アート・オブ・スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(ヴィレッジブックス刊)には、本作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』に関する膨大な量のコンセプトアートが収録されている。その中には、映画終盤でレイアの着用するコートに関するアイデアが描かれたアートも複数収められているのだ。ポスターのレイアが着ているものをイメージしてもらえれば、そこに大きすぎる違いはないといっていいだろう。
衣裳デザインを務めたマイケル・カプラン氏によれば、ライアン監督はレイアを「女王らしく風格のある姿」にしたがっていたという(同書P.200)。そこで彼が参考にしたのは、大きなケープをまとっていたエリザベス女王の写真だったのだ。ところがその一方、監督はまるで別のアプローチによってアイデアを提案している。
「キャリーの美しさを再び引き出したかった。[中略]僕が出したアイデアの一つは、顔の下半分が隠れる巨大な襟がついた、ブレードランナーみたいな大きなコートだ。全身をボタンで留めた実務的な服装にはしたくなかった。かっこよく偉そうに見せたかったんだ」
―『アート・オブ・スター・ウォーズ/最後のジェダイ』P.200(フィル・スゾスタック ライアン・ジョンソン著,秋友克也訳,ヴィレッジブックス)
ここで「ブレードランナーみたいな」と述べられているのは、『ブレードランナー』でレイチェル(ショーン・ヤング)が着ていたものだろうか、それともロイ(ルドガー・ハウアー)の着ていたものだろうか。単純に性別で判断すればレイチェルかとも思われるが、完成したビジュアルはロイの着ていたコートに近いようにも思われる。
ところで『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)に始まった現行3部作で衣裳をデザインしているマイケル氏は、何を隠そう『ブレードランナー』の衣裳をデザインした人物でもある。監督から「ブレードランナーみたいな」という提案を受けた彼は、その時なにを思ったのだろう?
ジョージ・ルーカスは『エピソード2/クローンの攻撃』(2002)において『ブレードランナー』の影響を受けていたともいわれるが、『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』といった“王道のSF作品”とは異なるものとして登場し、あらゆる方面に大きな影響を与えた『ブレードランナー』が、こうして2017年の『スター・ウォーズ』に影響を与えることになろうとは……。SF映画の歴史が紡ぎ出す、壮大なドラマを感じられるエピソードだ。
なお『アート・オブ・スター・ウォーズ/最後のジェダイ』には、豊富なコンセプトアートのほか、ライアン・ジョンソン監督ほかスタッフによる製作秘話が大量に収められている。『ブレードランナー』のみならず、ライアン監督がいかに多くの映画から示唆を受けているかもわかって非常に興味深い。製作プロセスからじっくりと作品を味わいたい方にお薦めしたい一冊である。
映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2017年12月15日より全国の映画館にて公開中。
[参考文献]
『アート・オブ・スター・ウォーズ/最後のジェダイ』フィル・スゾスタック ライアン・ジョンソン著,秋友克也訳,ヴィレッジブックス
Source: https://www.inverse.com/article/39596-leia-last-jedi-dress-carrie-fisher-style-star-wars
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