【ネタバレ解説】「THE LAST OF US」第1話はゲーム版の衝撃をいかに再現したのか? ─ ドラマ版ならではの工夫とは

この記事には、「THE LAST OF US」第1話「闇の中にいる時こそ…」のネタバレが含まれています。

ドラマ版の第1話は、米テキサス州オースティンに住む少女サラ・ミラー(ニコ・パーカー)の一日からスタート。サラは誕生日を迎えた父・ジョエル(ペドロ・パスカル)のために朝食を作り、学校で授業を受け、ジョエルの時計を修理に出し、隣人宅を訪ねる。そして夜遅く帰宅したジョエルに修理した時計をプレゼントし、親子で映画を鑑賞する。やがてサラは寝落ちし、ジョエルはひとりで弟・トミー(ガブリエル・ルナ)を留置場へ迎えに行く。
サラが目を覚ますと、菌類による感染症が急拡大し、町では大混乱が起こっていた。サラ、ジョエル、トミーの3人は必死で脱出を試みるが上手くはいかない。軍に感染の疑いをかけられると、サラは兵士に撃たれて致命傷を負い、父親の腕の中で息を引き取る……。
米Entertainment Weeklyのインタビューにて、「我々は、プロットアーマー(重要なキャラクターが窮地に陥っても不自然に助かる展開)を持つキャラクターに慣れてしまっています」と述べたメイジン。原作の序盤でサラが死亡する瞬間について、次のように語っている。「ゲーム『THE LAST OF US』が成し遂げた素晴らしいことの1つは、残酷で見事で悲痛な方法によって、そのプロットアーマーに穴を開けたことです」。
原作ゲームにおいて、サラはプレイヤーが最初に操作するキャラクターだ。ゆえにプレイヤーとキャラクターの間に感情的な絆を築くことに成功し、サラの死という悲劇を体験させることができる。一方テレビドラマで、第1話の冒頭から視聴者に感情移入させるのは簡単ではない。メイジンは「テレビ番組でそんなことはできません」とした上で、キャラクターへの感情移入を実現するための工夫を明かした。「彼女との時間をもっと増やすことはできます」。
ゲーム版と異なり、ドラマ版ではサラの最後となる日の一部始終が描かれている。視聴者はサラの一日を見ながら、彼女の視点で世界が破滅へ向かう恐怖を体験することで、次第に彼女に感情移入していく。ゆえに、サラが殺された瞬間には、ゲーム版のプレイヤーと同じように悲しみと衝撃を味わうことができるのだ。

また原作ゲームを手がけ、ドラマ版の監督・脚本・製作総指揮を務めるニール・ドラッグマンは「このようなアウトブレイクが発生した場合、子供の視点からはどのように映るのかを表現する機会もありました」と語る。「彼らは積極的にニュースを見ているわけではありません。教室で誰かの手が震えている姿を見たり、時計屋が早く閉店するからと締め出されたりするだけです。この恐怖は、世界にじわじわと広がっているのです」。
そんなサラの死は、単に今後のエピソードで待ち受けるダークな展開を予告しているわけではない。ジョエルというキャラクターを形作る重要なシーンであることを、メイジンは強調している。「ジョエルというキャラクターがシーズンを通して身にまとう究極のアイデンティティであり、彼らが誰で何をするのかを形作る、決定的な瞬間です。そしてエリーというキャラクターが、この喪失感やトラウマ、希望の消失、そして再び希望を持つ方法について、彼にどのような影響を与えるのか。その人間性が、突如として自分がいかに非人間的な存在になりうるかを教えてくれるのです」。
HBOオリジナル「THE LAST OF US」はU-NEXTにて独占配信中。
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Source:Entertainment Weekly