米ワーナー、クリストファー・ノーラン監督との関係継続を希望 ─ 劇場&配信戦略への猛批判を経て

米ワーナー・ブラザースが、『TENET テネット』(2020)や『ダークナイト』3部作などで知られるクリストファー・ノーラン監督との関係継続を望んでいる。2020年12月、ワーナーが2021年公開作品をHBO Maxにて劇場公開日に同時配信すると決定したことが、ノーランをはじめとするフィルムメーカーの怒りを買ったのだ。
最大の問題は、コロナ禍におけるワーナーの新戦略が、映画の作り手にあらかじめ通告されていなかったことだ。ノーランは「不信感がある、やり方が良くない」との声明を直後に発表し、HBO Maxは「最低のストリーミングサービス」だと公に批判した。「ワーナーは劇場や自宅、どんな場所でもフィルムメーカーに成功をもたらす組織でした。しかし今、それが解体されているのです。彼らは自分たちが失っているものを分かっていない」。
この批判から約半年が経過した今、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ・グループのトビー・エメリッヒ会長は、ノーランとの関係をこう語った。
「クリス・ノーランの次回作がどうなるかは彼しか知りません。ただし我々は、ワーナー・ブラザースで作ってもらえることを望んでいます。」
ノーランは『インソムニア』(2002)から『TENET テネット』まで、すべての監督作品をワーナーで手がけている。しかし批判ののち、2021年1月には「ノーランは次回作ではワーナーに戻らない見込み」とも報じられた。現在の心境は、エメリッヒ会長が語った通り“ノーランのみぞ知る”というところだ。
ワーナーによる劇場公開&配信のハイブリッド戦略を指揮したとされる、ワーナーメディアのジェイソン・カイラーCEOは、ワーナーメディアと米ディスカバリーの事業統合、および新会社「ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery)」の設立発表後、すでに退職準備を進めているとされる。カイラー氏の戦略はノーランをはじめ、ドゥニ・ヴィルヌーヴら複数の監督とスタジオの関係に悪影響を与えただけに、今後のワーナーには関係回復の手立てが求められる。
エメリッヒ会長は現在、ハイブリッド戦略について「当初の反応は理解できますが、今はよりよい状況にあると思う。きっと信頼を回復できているはず」とコメント。しかし、米国の大手エージェント企業・CAAのブライアン・ロード氏は「ワーナーは信頼回復に努めていると思われますか」との問いに「いいえ」と答えた。
Source: The Los Angeles Times(1, 2)