ドラマ版『ウォッチメン』は原作コミックの「リミックス」目指す ― 新キャラクター登場、現代の物語に

アラン・ムーア原作、デイヴ・ギボンズ作画によるDCコミックスの傑作『ウォッチメン』(小学館集英社プロダクション刊)のドラマ化企画が米国で進行している。ショーランナー(製作統括)として脚本に参加するのは、ドラマ『LOST』(2004-2010)や『LEFTOVERS/残された世界』(2014-2017)を手がけたデイモン・リンデロフ氏だ。
このたびデイモン氏は、自身のInstagramにてコミックファンへ宛てた手紙を公開。来たるドラマ版がコミックを忠実に映像化するものではないこと、新たな試みを大いに取り入れることを明かしている。
コミック『ウォッチメン』は「聖域」
全5枚に及ぶデイモン氏の手紙には、ドラマ版『ウォッチメン』に直接関係する内容や、デイモン氏自身について語られた内容が詰まっている。本記事ではドラマ版に関して特に重要な部分を抜粋してご紹介することにしよう。
コミック『ウォッチメン』は現在もなお世界中に熱狂的なファンを増やし続けている、コミック史に残る傑作だ。自身も作品の大ファンだというデイモン氏は、ドラマ版について「ミスター・ムーアとミスター・ギボンズの作った全12号を“脚色”したいとは思っていません」と言い切っている。
「(コミックは)聖域であって、焼き直されたり、作り直されたり、再生産されたり、リブートされたりするものではありません。しかしながらリミックスされるものではあります。よく知られた物語の底に流れているものは非常に優れていますし、そこを抽出しなければ愚かというものでしょう。原作の全12号は、私たちにとっての旧約聖書です。新約聖書が登場した時も、それ以前のものが消え去りはしませんでした。」
ドラマ版『ウォッチメン』は、コミックと同じ世界を舞台に、コミックから大きな影響を受けた新たな物語になるという。デイモン氏は、『ウォッチメン』特有の構造を活かして予測不能の物語を作り出す意気込みを明かしているのだ。
「(ドラマ版では)新たな問いかけをして、新しい視点で『ウォッチメン』の世界を探っていかねばなりません。何よりも重要なのは、現代の作品であるということです。原作は1980年代、レーガンやサッチャー、ゴルバチョフの時代を描いていました。私たちの作品は、(ドナルド・)トランプや(テリーザ・)メイ、(ウラジーミル・)プーチンが影響する世界と共振しなければいけません。」
そこでデイモン氏が取り入れるのは、コミックに登場しない新たなキャラクターや、登場人物が身につける“新たなマスク”だという。同じ世界観、時代にフィットした新たなストーリーとキャラクター。ドラマ版『ウォッチメン』は、いうなればコミックの精神を継いだ新しい『ウォッチメン』となりそうだ。
なおデイモン氏は、以前コミックとドラマ版の関係を、コーエン兄弟による映画『ファーゴ』(1996)とノア・ホーリーによるドラマシリーズ『FARGO/ファーゴ』(2014-)になぞらえて語っていた。ドラマ『FARGO/ファーゴ』は映画版を単純に脚色・翻案するのではなく、映画の世界観を拡張して新たな物語を描くようなコンセプトになっている。
ちなみにドラマ版『ウォッチメン』を製作する米HBO局は、パイロット版に出演するキャストを一部発表した。
主役級の人物に『LEFTOVERS/残された世界』に出演したレジーナ・キングが配されたほか、『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)のドン・ジョンソン、『インクレディブル・ハルク』(2008)や『シンクロナイズドモンスター』(2017)のティム・ブレイク・ネルソン、1960年代からのキャリアを誇るルイス・ゴセット・Jr.、『サイレントヒル: リベレーション3D』(2012)のアデレイド・クレメンス、『なりすましアサシン』(2016)のアンドリュー・ハワードらが出演する。ただし、彼らがどんな役柄で登場するのかは未だ謎のままだ。
Sources: Damon Lindelof, CBR, Variety
Eyecatch Image: Photo by Tristan Bowersox