米スト、提案契約コストは4億2,900万ドルに ─ ディズニー、コンテンツ支出を削減か

15年ぶりとなる全米脚本家組合(WGA)のストライキが3週目に入った。このままストが「数週間から数ヶ月」続いた場合、スタジオはWGAの提案に合意するよりも大きな損失を被る可能性があるという。
映画会社やテレビ局、ストリーミング企業などが所属する業界団体Alliance of Motion Picture and Television Producers(AMPTP)とWGAとの交渉は合意に至らず、5月2日(現地時間)ストライキに突入した。WGAは脚本家の報酬増額や待遇改善、脚本開発に関するAI利用の具体的な規制を求めていた。
米The Hollywood ReporterによるとWGAは、AMPTPが提案を受け入れた場合、スタジオから脚本家に支払う費用は年間4億2,900万ドルになると試算。16日(現地時間)にWGAから組合員に送られたメールには、スタジオ別の予測費用も記されていた。
AMPTPは350以上の制作会社を代理しており、上位8社のみで計算すると、費用の合計は約3億4,300万ドルになるという。上位2社はディズニーとNetflixで、それぞれ7500万ドル、6800万ドルの追加報酬を支払うことになる。続いてワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーは4,700万ドル、パラマウント・グローバルは4,500万ドル、NBCユニバーサルは3,400万ドル、Amazonは3,200万ドルと見積もられた。
またWGAは、これらの費用を各社の年間収益と比較。収益に占める構成割合を算出したところ、ディズニーは0.091%、Netflixは0.214%、ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーは0.108%、パラマウント・グローバルは0.148%、NBCユニバーサルは0.028%、Amazonは0.006%との結果が出たという。
WGAの交渉委員会は組合員向けの声明の中で、「これらの改善案にかかる費用は、業界の収入や利益と比較すると控えめですが、過去10年間で報酬や労働条件が下がった作家にとって不可欠です」とコメント。「これらの企業は、脚本家の仕事によって何十億もの利益を得て、四半期ごとに脚本によるコンテンツの重要性を投資家に説明しています。しかし、これから数週間から数ヶ月の間に、和解の費用をはるかに上回る重大な混乱が続くリスクを負っているのです」。
なお、WGAはスタジオ別の費用の算出にあたり業界全体のデータを参照したというが、その詳しい方法は説明されていない。あるスタジオ関係者は、オーバーオール契約の一時停止や制作費の低下により、業界が現在コスト削減を行っていることを指摘し、「この数字が事実に基づいているかどうかは疑問だ」と述べているという。
また一方、WGAによる試算でトップに位置したディズニーは、ストライキの影響で2023年のコンテンツ支出を削減する可能性がありそうだ。かねてからディズニーは製作費・製作量を削減する方針や、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の作品発表ペースを落とす意向を示していた。そんな中、クリスティン・マッカーシーCFOは17日(現地時間)、カンファレンスにて「私たちは脚本家ストライキの真っ最中です」と述べ、コンテンツ支出が当初予想されていた300億ドルから削減される可能性に言及。実際、前日に行われたディズニーのアップフロント・プレゼンテーションでは、「脚本家ストライキの影響で、脚本作品は明らかに少なかった」と米Varietyは指摘している。プレゼンで焦点が当てられた作品は、「シークレット・インベージョン」、「ロキ」シーズン2、「エコー」の3本のみだった。
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Source:The Hollywood Reporter,IndieWire,Variety