ジョス・ウェドン、『ジャスティス・リーグ』ガル・ガドット&レイ・フィッシャーの告発に応答 ─ 騒動後、初めてインタビューに応じる

DC映画『ジャスティス・リーグ』(2017)をザック・スナイダー監督から引き継いで完成させたジョス・ウェドンによる不適切な振る舞いについて、本人が初めて口を開いた。このたび、ウェドンは米Vultureのロングインタビューに応じ、幼少期の出来事から、これまでに告発・証言されたハラスメント疑惑まで自らの考えを語っている。
『ジャスティス・リーグ』にウェドンが登板したのは、2017年5月、監督のスナイダーが愛娘の死を受けて降板したため。脚本のリライトと膨大な再撮影・再編集を担当したが、これはウェドンによると「(ワーナー・ブラザースから)修正を頼まれ、お手伝いができると考えた」から。当初は脚本の再執筆とアドバイスのみを担う予定だったが、すでにスタジオはスナイダーのビジョンを信頼しておらず、ウェドンに全権を委ねたがったという(ワーナーはこれを否定している)。話がややこしいのは、すでにウェドンも『ジャスティス・リーグ』への参加を“人生最大の後悔のひとつ”だと考えていることだ。
ウェドンが仕上げた『ジャスティス・リーグ』の劇場公開版は、批評家や熱心なファンから厳しい評価を受け、のちに“スナイダーカットを公開せよ”という動きが生まれることになった。さらにウェドンにとって大きかったのは、2020年7月、サイボーグ役のレイ・フィッシャーが「ウェドンによるキャストやクルーの扱いは下劣で、虐待的で、プロではなく、全くもって受け入れがたいものだった」と告発したことだ。2021年5月には、ワンダーウーマン役のガル・ガドットも「(ウェドンに)キャリアを脅かされました。(意に沿わない)何かをしたらキャリアをめちゃくちゃにしてやるぞって」と発言。キャストとウェドンの間に不和があったことが判明し、のちにウェドンは過去の作品でも不適切な振る舞いがあったことを告発・証言されている。

今回の取材では、ウェドンが『ジャスティス・リーグ』に自らのビジョンを取り入れたこと、前任のスナイダーとはスタイルがまったく異なったことから出演者の不信を招いたことが紹介されている。アドリブを許すスナイダーに対し、ウェドンは脚本を一字一句言い換えない台詞回しを要求したのだ(あるスタッフは「これが失敗だった」と証言)。ときには役者が脚本を批判することもあり、ウェドンによると、ガルは「ジョスはヒーロー映画の作り方を理解していない」とも述べたという。あるとき、ウェドンは撮影を止めて「こんなに失礼な人たちは初めてだ」と発言。一方、サイボーグの出番を大幅に減らすにあたり、ウェドンはレイの言葉にまったく耳を貸さなかったともいわれている。
では、レイとガルによる告発を、ウェドン自身はどのように認識しているのか。
まず、ウェドンがガルを脅迫したという件については「僕は誰のことも脅迫しない。誰がそんなことをするの? 彼女(ガル)は英語が第一言語じゃないし、僕は口が悪くなってしまいがちだから」と述べて、あくまでも脅迫の意志はなく誤解にすぎないと主張した。たとえば、ガルがあるシーンのカットを求めた際、ウェドンは“カットしたければ僕を線路の上にくくりつけ、僕の死体の上でやってくれ”と冗談めかして言ったという。「それが、彼女の死体をどうするとか、彼女を線路にくくりつけるとかって話をしたことになっていた」。もっとも、ガルは取材に対して「私は完璧に理解していました」と回答してウェドンの主張を否定している。
レイに対するウェドンの反応はさらに辛辣だ。サイボーグの出番を減らした主な理由は、“ストーリーの筋が通っていなかったから”、そして“レイの演技が良くなかったから”。ただし取材によると、当時こう感じていたのはウェドンだけではなく、スナイダー版の試写を観た関係者が「サイボーグがまるで良くない」との感想を漏らしていたのも事実だという。ウェドンは今回、レイとの話し合いには時間をかけ、穏やかかつ敬意をもってプロセスを進めたとも主張。その後のレイの告発は真実ではなく、「(動機は)悪意だと思う。ふたつの意味で悪い俳優だったのでしょう」とさえ述べた。
なお、レイが「肌の色を映像処理で変えられた」と主張したことについては、ウェドンは“ポストプロダクションで映画全体を明るくした。顔色は出演者みんなが明るくなっている”と応答。あくまでも認識の相違であるということを強調した。

『ジャスティス・リーグ』にとどまらず、ウェドンは過去のあらゆる不適切な振る舞いを告発され、SNSでもユーザーの批判を受けている。スナイダーのファンから“悪のフェミニスト、悪い夫だ”という言葉をぶつけられることもあるというが、ウェドンは「彼らはフェミニズムには無関心だと思う」と述べた。「僕は元妻に攻撃され、人々がそれを悪用した。元妻が私の悪行を手紙に書き、真実ではないことも語ったんです。しかし、実際に私は悪いこともしていた。だから私のことは攻撃してもいいと思われたんでしょう」。
取材の冒頭でウェドンは、自分の発言が注目を浴びること、さらなる批判や炎上につながりうることも認識している。「自分の口から出る言葉、そのすべてが怖い」と言っているのだ。しかし、今回のインタビューでは過去のあらゆる行動について弁明が行われており、すでにSNSでは苛烈な反応が見られる。そんな中、最初にウェドンを批判したレイは、「ウェドンが結局『エンドゲーム』を撮ることにしたみたい。嘘や戯言に言及するよりも、マーティン・ルーサー・キング・Jr.師を称えることにします。明日も仕事は続くから」とだけTwitterに記した。
Looks like Joss Whedon got to direct an endgame after all…
Rather than address all of the lies and buffoonery today—I will be celebrating the legacy of Reverend Dr. Martin Luther King Jr.
Tomorrow the work continues.#MLKDay
A>E
— Ray Fisher (@ray8fisher) January 17, 2022
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Source: Vulture