『ワンダーウーマン 1984』監督、契約トラブルで降板検討していた ─ 報酬の男女格差に抵抗、業界に前例つくる

2017年8月、映画『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス監督が、続編への就任にあたり、米ワーナー・ブラザースと異例の条件で契約を結んだと報じられた。もっとも“異例”とはいえ、ジェンキンス監督の契約金は、全世界興行成績8億ドルの大ヒット作を生んだ監督としては決して珍しくない額だったとされる。それほどまでに、映画界において女性監督は厳しい条件を突きつけられることが当たり前になっていたのだろう。
ポッドキャスト「Happy Sad Confused」では、続編『ワンダーウーマン 1984』への就任をめぐってジェンキンス監督とワーナーが一時対立していたことが明かされている。ジェンキンス監督は、なかなか契約条件に折り合いがつかなかったがゆえに「降板しようとしていた」とさえ語っているのだ。当時、ワーナーには「別のスタジオに行って続編じゃない映画を4分の1の金額で作るほうがいい」とまで言っていたという。

ジェンキンス監督にとっても、契約についてのトラブルが公に報じられることは想定外だった。それでも契約にこだわったのは、それが自分自身だけの問題ではないと理解していたためだ。監督は「自分の信念だったので問題なかった」と語り、自身の経験と、『ワンダーウーマン』以降の役割について話している。
「『モンスター』(2003)を作った後にわかったのは、私は女性映画監督なのであって、映画監督ではないのだということ。この業界では、そのことがいろんなところに付いて回ります。どんな仕事のオファーが来るのか、どのようにオファーされるのか。『ワンダーウーマン』を作るまでは全く稼げなかったわけですが、私はそのこととうまく付き合ってきました。だけど今から思えば、私が稼げなかったのは、誰もが持っていた力が私にはなかったから。状況が変わった今、形勢を逆転させなければいけないと思いました。」
ここでジェンキンス監督が指摘しているのは、監督の契約をめぐる男女格差の問題だ。インディペンデント出身の男性監督が初めてヒーロー映画を撮る際のギャランティは、『ワンダーウーマン』でジェンキンス監督が受け取った金額の約7倍にも及ぶものだそう。なんと『ワンダーウーマン』続編の打診を受けた際、ジェンキンスがワーナーから提示された金額はその金額よりもまだ低かったという。
「簡単なことでした。“これではやれない、絶対にやれない”と言えばよかったんです。特に、この条件で『ワンダーウーマン』をやるわけにはいかないと。[中略]ここで勝てなければ、誰もが失望することになってしまう。こういうことを自分がやらなくて誰がやるんだ、と思いました。だから本気で取り組みましたね。」
交渉の末、ジェンキンス監督は『ワンダーウーマン』続編就任のために求める条件を勝ち取った。これには『ワンダーウーマン』が興行的・批評的な成功を収めたこと、映画館の差別解消を求める声が大きくなってきたことなど、いくつもの背景が考えられるだろう。ジェンキンス監督による前例のもと、現在のハリウッドでは女性監督が大作映画に次々と起用されつつある。作品の舞台裏にも、歴史を変えるべく戦っていた女性がいたのだ。
Sources: Happy Sad Confused, IndieWire, io9, Deadline