【特集】『X-MEN:ダーク・フェニックス』公開、ファンの声は ─ 「集大成」「観たかったミュータントバトル」「全てが報われた気がした」

シリーズ第1作より19年続いた『X-MEN』の戦いが、今ついに完結する。『X-MEN:ダーク・フェニックス』がいよいよ日本でも公開となったのだ。アメコミ映画史上最も長い歴史を持つシリーズとあって、ファンの思い入れもひとしお。THE RIVERに寄せられたX-MENファンの生の声と共に、シリーズ完結作となる『ダーク・フェニックス』を、本記事で盛大に送り出したい。

ありがとう、X-MEN
2019年6月17日、都内で「X-MEN 最後のファン・スクリーニング」と題した特別なイベントが開催されると、コスプレ参加者も含む熱心なX-MENファンが集結した。これで、完結──。チケットを握りしめてスクリーンに向かう姿は、期待と興奮、僅かな物寂しさに満ちている。「『X-MEN』は、観ていて胸が締め付けられる切なさがある作品。」鑑賞に先立って、ファンの”丸山 元”さんはTHE RIVERにこう寄せていた。「とても寂しくもあり、今までありがとうという感謝の気持ちが入り混じった、複雑な心境です。」
『X-MEN』シリーズは「家族や仲間の大切さを教えてくれた作品」なのだと熱弁するのは”あんてぃーく”さん。「敵とか味方とかそういうことより、常に誰かの隣人でいることを意識させてくれました。より良い世界を目指すために尽力するミュータントがみんな素敵で、私もより良い世界を作るうちの1人になりたいと思うようになった素敵な作品たちです。本当に本当に、X-MEN大好きです。」
『X-MEN』はアニメシリーズからのファンだという”ねこ蔵”さんは、ミュータントたちの戦いについて「人種、能力に関係なく、人は生きる権利があり、虐げられてはいけない。派手でカッコいいだけでなく、シリーズを通して大事なことを伝え続ける素晴らしい作品」と思いを馳せている。
ご存知の通り映画『X-MEN』シリーズは、『X-MEN: フューチャー&パスト』(2014)で描かれた歴史改変によって時間軸が分岐。若きプロフェッサーXやマグニートーを主軸に据えた「新3部作」では、3作目の『X-MEN:アポカリプス』(2016)で新生X-MENが誕生した。プロフェッサーXのもと、ミスティーク、サイクロップス、ストーム、クイックシルバー、ビースト、ナイトクローラー、そしてジーン・グレイから成るメンバーだ。思想を分かつマグニートーの存在も欠かせない。
あなたの推しキャラは?個性豊かなキャラクターたち
こうした個性豊かなキャラクターたちによる群像劇が、『X-MEN』の大きな魅力でもある。人間社会から爪弾きにされたミュータントたちはそれぞれに固有の苦悩や能力があり、きっとお気に入りのキャラクターが見つかる。サイモン監督も本作では「壮大なオペラというより、より現実的なドラマに仕立てました」と語っている。

中でも人気が高いのはクイックシルバー。音速を超えるスピードの持ち主で、彼がひとたび走り出せば世界はまるでスローモーションに。過去作では、その能力を活かした見せ場も多い。ノリが軽いお調子者のキャラクター性も魅力的で、”若造”さんは「クイックシルバーのコミカルなシーンが入ることで明るくフランクな空気になる。おちゃらけムードメーカーな、エヴァン君演じるクイックシルバーが大好きです!」とコメント。実はマグニートーの息子であるという運命も抱えていて、”丸山 元”さんは「マグニートーに息子として接する事のできないもどかしさにグッと来る」と評する。

そのマグニートー/エリック・レーンシャーも大人気だ。確かに暴君のような一面もありながら、本質的には正義を信じるエリックは、プロフェッサーXと思想を決定的に分かつ存在。X-MENに立ちふさがる場面も多かったが、単純にヴィランとして切り分けることはできない。『フューチャー&パスト』の未来では、世界の滅亡に瀕してチャールズと行動を共にしていた。
“武政恵美”さんは、「『X-MEN』1作目では根っからのヴィランで、正直最初は全く好きではありませんでした」と打ち明けるが、新3部作を通じてキャラクターの過去が明らかになると、「少しずつ彼への考えは変わりました」という。『ダーク・フェニックス』では見せ場もあり、さらに好きになったとか。
ほかにも、「X-MEN初期シリーズから、彼が戦うその理由にどことなく人間らしさを感じ、共感ではないですが関心を持っていました。エリックの人間らしさがより深く描かれている『ファースト・ジェネレーション』を観て、一番好きなキャラとなりました」(”もりも”さん)、「チャールズとの愛憎の関係性、同胞を守る為に覚悟を決めて苦渋の決断でも厭わない姿勢、本当は家族を欲している優しさなど何から何まで魅力」(”ヒュー様大好きAvenger”さん)、「自分の信念を持っていて、芯が強く、頭脳明晰で、仲間思いで、影のあるところも魅力!悪の道に入った理由も共感できて、憎めない」(”Mariko”さん)とエリックを支持する声は非常に多い。”てごろ”さんはエリックの繊細さや情の厚さに惚れ込み、「『X-MEN』の大きな魅力の1つである”人間らしさ”の象徴」とも。

エリックの苦悩は、考えを異にするプロフェッサーX/チャールズ・エグゼビアの存在あって際立つ。旧3部作ではパトリック・スチュワートとイアン・マッケランが、そして『ダーク・フェニックス』に至る新シリーズではジェームズ・マカヴォイとマイケル・ファスベンダーが演じたこの2人について、”れむ”さんは「ミュータントを守りたいのはどちらも同じなのに、どうしようもなく道が違ってしまう二人の関係性がとても好きでした」と振り返る。もちろんチャールズを敬愛するファンも多く、”ばるばどす”さんは「孤高の人ですが、己の責任と過ちから逃げない人」とキャラクターの本質を理解。”まきしもふもふ”さんは「人に愛想を尽かすことなく、善の面を信じようとするところに魅力を感じる。中々出来ないことだから尊敬する」と語る。
『ダーク・フェニックス』ジーン・グレイの存在
まだまだ魅力的なキャラクターには事欠かない『X-MEN』シリーズだが、『ダーク・フェニックス』で最重要人物となるのが、ソフィー・ターナー演じるジーン・グレイだ。前作『アポカリプス』でも内なるダークサイドの増幅を恐れていた彼女は、本作では宇宙でのミッションで起きた事故によって闇の力が制御不能に。彼女の中に閉じ込められていたもう一つの人格”ダーク・フェニックス”が解き放たれてしまう。

原作コミックの中でも特に人気の「ダークフェニックス・サーガ」が原案となっているが、この物語はシリーズ3作目『X-MEN: ファイナル ディシジョン』(2006)でも一度映像化されている。『ファイナル ディシジョン』は、前2作を監督したブライアン・シンガーがスケジュール都合で急遽降板、代わりにブレット・ラトナーが監督に起用されていた。こうした経緯もあって、制作陣にとって『ファイナル ディシジョン』は言わば不完全燃焼だったのだ。(『アポカリプス』でも、劇中で映画鑑賞に出かけた一向が「どの映画でも、3作目って最低」と自虐するシーンが挟まれたほど。)
『ダーク・フェニックス』で監督を務めたサイモン・キンバーグは、これまで計7作の『X-MEN』映画(スピンオフ含む)で脚本や製作に携わってきた、「誰よりも『X-MEN』を知る男」と呼べる人物。『ファイナル ディシジョン』では脚本を務めているが、作品のトーンについて「僕の好みではなかった」と正直に振り返っている。特に反省点として挙げているのが、ジーン・グレイのダーク・フェニックスとしての物語をしっかり描ききれなかったこと。「ジーン・グレイの物語になっていませんでした。彼女が物語の客体になってしまっていて、主体ではなかったんです。」「『ファイナル ディシジョン』以降、僕は最初に意図した通りに『ダーク・フェニックス』のストーリーを伝える機会を伺っていました。」

『ダーク・フェニックス・サーガ』映像化の再挑戦に意欲を燃やしていたサイモン・キンバーグに、自身のキャリア史上初めて監督業に挑戦する勇気ときっかけを与えたのは、ミスティーク/レイヴン役のジェニファー・ローレンスだった。「彼女に言われたんです。”次回作で監督をやるべきじゃないですか”って。それまで、そんなこと考えたこともありませんでした。でも彼女に言われてから、もし次回作が素晴らしいストーリーだったら、僕の初監督作としてうってつけじゃないかと。」こうしてサイモンは、『X-MEN』コミック史上最も偉大なストーリーを今度こそ立派に映画化してみせるというプレッシャーと戦いながら、『ダーク・フェニックス』に取り掛かる。「今までの作品とは違って、オリジナルのコミックにもっと寄り添った忠実な形で、ダーク・フェニックスのストーリーを考えることから始めました。そうして、自分なりの作り方を感触で分かるようになりました。考えるのではなく、映画にする方法を感覚として理解したという意味です。もっとキャラクターを中心にして、ジーンがダーク・フェニックスに変身することに焦点を当てるやり方にしました。」サイモンは製作初期の頃を述懐する。
シリーズで初めて宇宙にも舞台を伸ばす『ダーク・フェニックス』だが、本作では「地に足がついたリアルなものにしたい」という使命もあった。「これは自分を制御できなくなる人の話であって、その人の身近な家族への影響を描くものです。そして、この家族はたまたま、スーパーパワーを持ったX-MENと呼ばれる人たちなんです。」サイモンの狙い通り、『ダーク・フェニックス』では暴走してしまうジーン・グレイの心の叫びや、彼女を助けたくとも近寄ることも出来ないX-MENのドラマが描かれている。

大役を任されたジーン役のソフィー・ターナーは、本作の主旨を聞いてすぐに準備に取り掛かった。中でも彼女が重要視したのは、「キャラクターの足を地に付け、彼女に起こる超常的なことを誰でも共感できるように表現すること」。ジーンの場合は、精神分離症や解離性同一性障害(=多重人格障害)などの精神疾患に置き換えて考えることだったという。
ソフィーが全身全霊で演じたジーンは、スクリーンを美しくも圧巻の迫力で支配する。”KENYA”さんは「パワーと孤独と不安を抱えた精神性のギャップがとても良かった」とレビュー、”らんく”さんも「自らの強大な力を恐れて、そして自分という人間のあり方に苦悩するジーン。それを演じるソフィー・ターナーの演技が抜群でした」と大絶賛だ。”りーふ”さんも「ジーンの美しさが天元突破していて震えました。女神か。ソフィ、この時代に生まれてくれてありがとう」と熱い。
「この衝撃、今年一番」「気持ちの整理が出来ない」
『X-MEN 最後のファン・スクリーニング』の上映が終了すると、様々な想いを胸にしたファンが劇場から退出していく。「ほんっとに、震えました」と大絶賛の”武政恵美”さんは、「私は(シリーズを)最初から追いかけることはできませんでしたが、こうやって一緒に最後を迎えられることができて幸せです」と感無量だ。
長年愛し続けた『X-MEN』との別れに、気持ちの整理がつかない、という声も多い。”ささきけん”さんは「全く先の読めない展開で、今までとは明らかに違う空気、全てが終わった時に感じる喪失感。噛み砕くまで時間が必要です」と表する。鑑賞中に過去作への思いが溢れ出したという”佐藤茜”さんは、シリーズの完結を寂しがりながら「集大成と呼ぶに相応しい」、「必ず繰り返し観に行きます。でないと気持ちの整理が出来ない」と宣言した。

もちろん本作は、大規模なスーパーヒーロー映画としても存分に楽しめる。「今までにないド派手なアクションシーン!各人の能力を最大限かっこよく見せる画面作りにただただ圧倒されました。」(”うめちゅ”さん)、「中盤から衝撃的すぎて、前のめりで見てしまいました!映像も、本当に美しくて飽きること無く、一瞬で終わってしまいました…」(”ナツミスティーク”さん)、「ひたすら切なくシリアスに彼らの内面を描き、今までにない映像美と接近アクションに熱くなります。」「『ファースト・ジェネレーション』から築きあげた新シリーズの到達点に涙です。この衝撃、今年一番です。市街地のアクションなど、観たかったミュータントバトルが詰まってる。最近の作品のようなスケール重視の大味さより初期作のような接近戦を超絶アップグレードしててカッコよすぎます。」(”エックスウーマン”さん)、「アクションシーンは今まで観たヒーロー映画で1番と言っていい程見応えがあります。」(”てごろ”さん)、「バトルシーンは他のヒーローものよりも、どんなアクション作品よりも傑出していると思いました」(”りーふ”さん)と、アクションシーンの迫力や映像美を称える声も多い。
“らんく”さんは、「本当に素晴らしい作品でした」と胸いっぱいだ。「20年間続いてきたX-MENというアメコミ映画を代表するシリーズの堂々たる完結に相応しいラストだと思いました。予想外の衝撃のシーンから、期待以上のシーン、そして胸が熱くなるシーンまで、開始から引き込まれて最後の最後までハラハラドキドキしながら作品に夢中になりました。1作目から観てきたこれまでの全てが報われた気がして涙が止まりませんでした。これまでの全キャスト、スタッフに感謝を伝えたいです。」
サイモン・キンバーグ監督は、本作を「これまでのX-MENに終わりを告げる作品」と言い表している。泣いても笑っても、本当にこれで最後。20世紀フォックスとディズニーが事業統合を行ったことにより、マーベル・シネマティック・ユニバースへの将来的な合流に期待する声もあるが、それはまた別の話だ。『X-MEN:ダーク・フェニックス』こそ、劇場で見届けるべき歴史的重要作なのである。
前作『X-MEN: アポカリプス』(2016)にて、ジーン・グレイが巨⼤なる脅威アポカリプスに致命的な⼀撃を与え、⼈類を救ってから10年。宇宙でのミッション中、ある事故によってジーンのダークサイドが覚醒し、内側に封じ込められていたもう一つの人格〈ダーク・フェニックス〉が解き放たれた。そして世界に危機が訪れる。全宇宙の破滅を止めるため、X-MENはジーンの〈悪〉に⽴ち向かうが……。
映画『X-MEN: ダーク・フェニックス』は2019年6月21日(金)より大ヒット公開中。
『X-MEN: ダーク・フェニックス』公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/darkphoenix/