【ネタバレ】『X-MEN: ダーク・フェニックス』撮影されていた「幻の結末」とは ─ クライマックスの再撮影、その真相をひも解く

この記事には、映画『X-MEN: ダーク・フェニックス』の重大なネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。なお、このページをSNSにてシェア頂く際は、記事内容に触れないようお願い致します。
『X-MEN: ダーク・フェニックス』なぜ再撮影されたのか
『X-MEN: ダーク・フェニックス』の本撮影は2017年6月に始まり、同年10月に終了した。その後、再撮影の事実が伝えられたのは2018年3月。サイモン・キンバーグ監督と20世紀フォックスは、作品の編集や音響作業など、仕上げ一式をおこなうポストプロダクションの最中に「再撮影が必要だ」との判断に至ったとされる。
ところが本作の出演者は、いずれもハリウッドを代表するトップスターである。ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルト。一番のキーパーソンであるジーン・グレイを演じたソフィー・ターナーも、再撮影が決まった段階で、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ 最終章」の撮影に2018年9月までかかりきりだったという。米The Hollywood Reporterは、実際に再撮影が行われたのは2018年10月で、期間は5週間にも及んだと伝えている。
最初に再撮影の内容が示唆されたのは、2019年4月26日(米国時間)に発表された米Entertainment Weeklyの記事だ。そこには「宇宙が舞台ではなく、X-MEN全員が捕まり、軍の列車に乗り込むクライマックス」の、「新たな第三幕が撮影された」との記述が確認できる。米Deadlineによる公開後の記事にも、「ジーン・グレイとサイクロップス、チャールズ・エグゼビアが協力してジェシカ・チャステインと戦う結末は再撮影で変更された」とある。「試写の観客が求めたのは、X-MENの全員がラストに戦うことだった」とも。

すなわち本作の終盤、プロフェッサーX/チャールズ・エグゼビアがジーン・グレイを取り戻したのち、軍によってX-MENが拘束される展開は再撮影によって作られたものということだ。The Hollywood Reporterにて、サイモン監督は「(当初の結末では)X-MENファミリーの和解をきちんと描けていなかった」と語っている。
「(観客に)ファミリーのトラウマを味わってもらうことで、(最後に)与えたいカタルシスが生まれていないと思いました。観客として、彼らの物語を見れば、最後には再び団結するところが観たくなりますよね。もっと成熟した形で協力する彼らを観たくなる。癒され、強くなり、それまでとは違った姿が。第三幕にそういう面を反映したかった。より満足できて、カタルシスの得られる結末を作るために再撮影を行いました。」
また米Cinema Blendで、サイモン監督は、当初の結末について「X-MENが団結することには焦点を当てていなかった」と認めている。
「全体的にジーンを中心にしたラストでしたが、エモーショナルな終わり方ではなかったですね。この映画は、見知らぬ他人同士が疑似家族になってきたシリーズの最終章だと考えられる。今回、そんな彼らにかつてない試練が訪れるわけです。だから結末では、とてつもない力を手にしたジーンも見せたいし、X-MENが家族として再び団結して行動するところも見せたかった。両方見せたいと思ったんです。」

『X-MEN』シリーズでは、過去にも本撮影後に大幅な撮り直しがたびたび行われてきた。Deadlineによれば、本作の再撮影量は『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(2011)や『X-MEN: フューチャー&パスト』(2014)、前作『X-MEN: アポカリプス』(2016)よりも少なかったとされる。しかしフォックスは再撮影の計画を事前に立てていなかったため、いざ撮り直すまでに半年の空白が生じたというわけだ。過去作品にも脚本家・プロデューサーとして携わってきたサイモン監督は、こんな裏話も語っている。
「『アベンジャーズ』(マーベル・スタジオ)は製作のプロセスに再撮影を必ず入れていて、予算やスケジュールにも組み込んでいるんです。再撮影の時期まできちんと決めている。だけどフォックスのマーベル映画は、そんな風にしたことが一度もありませんでした。そうすべきだったのかもしれませんね、(製作に)ゆとりができますし。これだけの出演者を、同じ時に、同じ場所に集めるのは簡単ではありません。彼らは撮影が終われば、別の仕事に移っていきますから。」