「映画の予告編にあったシーンが本編になかった」は虚偽広告の可能性、米裁判所が見解

映画の本編には存在しないシーンを予告編で見せるのは虚偽広告にあたる可能性があるとの判決を、米連邦地裁判事が下した。米Varietyなどが伝えている。
騒動となったのは、ビートルズがいなくなった世界を描いた2019年の映画『イエスタデイ』。この予告編には人気女優のアナ・デ・アルマスの登場シーンが含まれていたが、後に出番がカット。公開された本編で、アルマスは一度も姿を見せなかった。
アルマスのファンである米メリーランド州のコナー・ウルフ氏とカリフォルニア州のピーター・マイケル・ローザ氏は、3.99ドル(約500円)を支払って本作をAmazon Prime Videoでレンタル。しかし、予告編に登場したアルマスが本編のどこにもいなかったことは虚偽のマーケティングに当たるとして、2人は配給の米ユニバーサル社を相手取って2022年1月に訴訟。米連邦地裁判事はこの度、原告側の訴えを認める判決を下した。
争点は、映画の予告編が“商業的”であるかどうか。被告のユニバーサル社は、予告編は“芸術表現活動”の一貫であるとし、商業目的には当たらないと主張。『ジュラシック・パーク』の予告編のように、本編にはない映像で構成されることは長年の慣例になっているとの論拠を展開した。
これに対しステファン・ウィルソン判事は、映画の予告編に一定の創造性や編集上の裁量があることを認めつつ、それらは予告編の商業的な性質を上回ることはないと判断。予告編の本分とは、「消費者に映画のプレビューを提供することで、映画を販売するために設計された広告である」とした。
またユニバーサル社は、予告編を“商業的言論”と見なすのなら、予告編から得た期待に映画が応えられていないとする主観的な訴訟も可能になってしまうと反論している。
この主張に対して判事の見解は、本訴訟は女優が映画に登場しているかどうかについての一点のみであり、それ以外のものではないとのもの。“合理的な消費者”の“かなりの部分”が誤解を受けるような広告は虚偽にあたると述べ、『イエスタデイ』の予告編を見た消費者がアナ・デ・アルマスの劇中での重要な出番に期待するのは、もっともなことであるとした。
原告側は、ユニバーサル社が『イエスタデイ』の虚偽の予告編で収益を上げていると主張しており、映画顧客の代表として最低500万ドルを求めている。ユニバーサル社は訴訟の棄却を求めていたが、この度判事がそれを退けた形。これをもって原告は訴訟手続を進められることとなった。