ザック・スナイダー、「イカゲーム」「ユーフォリア」を絶賛 ─ 現代のドラマは映画よりも「冒険的」

『ジャスティス・リーグ』(2017)などでDCユニバースの礎を築いたザック・スナイダーが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)などのルッソ兄弟によるビデオポッドキャスト「Pizza Film School」に出演。HBOドラマ「EUPHORIA/ユーフォリア」と韓国発の大ヒットドラマ「イカゲーム」を例に挙げ、現代のテレビシリーズがいかに冒険的であるかを熱く語った。
「テレビ番組の方が、視聴者が見たことのないものを見せたり、混乱させたり、予想外の展開を見せたりするのに長けているという意味で、今はまさにテレビの黄金時代だと思う」と述べたスナイダー。テレビシリーズは映画と比べて「より冒険的(riskier)」だと指摘する。
「例えば『ユーフォリア/EUPHORIA』。僕はこの番組を観ていて、ただただ信じられないと感じました。あの番組は存在すべきじゃないと思えるくらい、本当に素晴らしいんです。」
「ユーフォリア/EUPHORIA」は、ティーンエイジャーのドラッグやセックス、不安障害などの社会問題を過激かつ赤裸々に描き、アメリカで一大センセーションを巻き起こした衝撃作。製作会社A24とHBOがタッグを組み、主演をゼンデイヤが務めている。同作を観たスナイダーは、「これが映画だったら絶対に作られないし、こんな映画は存在し得ないだろうと思った」という。
ジョー・ルッソもこれに同意し、もし映画だったら興行収入などのプレッシャーに負けて、リスクのある過激な描写は取り除かれるだろうと指摘した。
またスナイダーは、過酷なサバイバルゲームを描くNetflixドラマ「イカゲーム」にも言及。もし同作が映画だったらアメリカで大ヒットすることはなく、「ミニシアター上映になったでしょう」とも推測している。「『ユーフォリア』や『イカゲーム』は、視聴者がどこに向かっているのか、何が起こっているのか、まったくわからない方向に連れていってくれる。視聴者はそういうものを求めているのだと思います」。
ストーリーテリングの観点でテレビシリーズが優れている理由は、映画よりも「リスクを冒せる」点だけではない。その理由のひとつとして、ジョー・ルッソはテレビシリーズのフォーマットを挙げている。ひとつの物語を何話もかけて描く分、視聴者はキャラクターに深く感情移入できるからだ。
ジョーは“10時間(全10話)のストーリーの中で5時間後にキャラクターが死ぬ”ケースを例に挙げ、「(視聴者が)そのキャラクターと5時間過ごしたのと、1時間過ごしたのでは、感情移入の度合が違います」と主張。「視聴者はより多くの時間を割いて、より多くの感情を注ぎます。ゆえにキャラクターが死んだ時、いかに自分が入り込んでいたか実感できるのです」。
スナイダーやルッソが述べた通り、テレビシリーズは興行収入という数字を意識しなくてもよい分、映画と比べて制作上の柔軟性があり、より「冒険的」な作品を送り出すことができるだろう。また、Netflixなどストリーミング配信が主流になって以来、1シーズンの話数やエピソードの尺も自在に変化させられるようになり、クリエイターはより自由に表現できるようになっている。それにしても、現在のテレビ黄金時代が始まった当初はテレビ作品が「映画のクオリティ」を目指していたことを考えると、時代の変化を感じるのではないだろうか。
なお、ルッソ兄弟は『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ』シリーズなどの映画作品でよく知られているが、かつては「コミ・カレ!!」などテレビシリーズに監督・製作総指揮として参加していた。直近では、4月28日に配信を控えるAmazonの大作ドラマ「シタデル」で製作総指揮を務めている。スナイダーは、企画・監督・脚本を手掛けたNetflixのSF映画『Rebel Moon(原題)』が待機中だ。
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Source: Variety, Pizza Film School